人形浄瑠璃,歌舞伎の場面の一種。劇的・叙事的な段物浄瑠璃に対して,抒情的・叙景的な景容本位の場面である。《狐火》《四季の寿》など。視覚,聴覚を楽しませる感覚的性格が強い。舞台を美麗にしつらえ,登場人物(人形)の衣装も華やかで美しい。そして,歌うような旋律的な音楽を伴う。歴史的には,古浄瑠璃の物づくしに始まり,義太夫節にも継承され,さらに京坂の歌舞伎でも採り入れられた。写実的な演技でなく,音楽にのった振りないしは舞踊風なしぐさで,景容の美を重んずる。義太夫節も掛合で演奏し,段物浄瑠璃と違った独特の音遣い,きれいな三味線の音色をきかせる。広義には,道行をも含むが,普通は区別している。また,普通の段物浄瑠璃中にも,一部分が景事とおなじ音楽性を示す場合がよくある。この部分も景事と呼ぶ。なお,幕末期以後,義太夫節では〈けいじ〉と呼ぶことが多い。
執筆者:井野辺 潔
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人形浄瑠璃(じょうるり)、歌舞伎(かぶき)用語。「けいじ」ともよぶ。京阪で使われる。浄瑠璃の場合、節事(ふしごと)ともいい、曲節と人形の舞踊的な動きを主にした道行(みちゆき)とか何々づくしのこと。叙景的な部分が中心なので、この名ができたという。歌舞伎でも、江戸時代の京坂の脚本では、観客の気分を変えるための舞踊風の一幕を景事とよび、転じて舞踊または舞踊劇の異称にもなった。現代では、文楽(ぶんらく)の舞踊風の演目にだけ、この名称が用いられる。『仮名手本忠臣蔵』八段目の道行、『団子売(だんごうり)』などが例。
[松井俊諭]
…以上の各場は作曲,演奏の上でやはり区別される。(2)段物と道行・景事 劇的性格のつよいふつうの曲を段物という。通常太夫,三味線各1人ずつで演奏し,ときに三味線がさらに加わるツレ弾きや,箏,胡弓などが部分的に加わることもある。…
…歌舞伎舞踊のこと。〈所作〉また〈振事(ふりごと)〉〈景事(けいごと)〉とも。歌舞伎の文献では1687年(貞享4)の《野良立役舞台大鏡》にみえるのが古く,所作事ははじめやつし事として,職業の意味での所作から,職業とくに職人の動きを舞踊に写したものであった。…
…道行を題材とした所作事。〈道行事〉とも〈景事(けいごと)〉ともいう。一段あるいは一場を通じての道行で,独立性を有し,ある仮定の地に達する間を扱う舞踊劇を指す。…
※「景事」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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