大家郷（読み）おおえごう

日本歴史地名大系

大家郷
おおえごう

• 大分県：中津市
• 大家郷

古代の下毛郡大家郷（和名抄）の系譜を引く中世郷。「宇佐大鏡」の宇佐宮御封田一〇郷のうちに「大家郷　田数百六十四丁　佃六丁同前用作八丁二段同前」とある。宇佐宮神領次第案（到津文書）に「同七十四名大家郷」とあり、仁治二年（一二四一）には名田七四を数えたらしい。宇佐宮根本神領の一つであったため同宮との関係は深かった。承久二年（一二二〇）七月日の宇佐公仲下文（同文書）では、宇佐宮の宮中宿直番を勤めなかった当郷「神領土民百姓等」三二名に過料を割当てている。

大家郷
おおやけごう

• 群馬県：上野国
• 多胡郡
• 大家郷

「和名抄」高山寺本・東急本ともに訓を欠く。山上（やまのうえ）碑や金井沢（かないざわ）碑（ともに現高崎市）に「佐野三家」とあり、「三家」は「みやけ」（屯倉）と読むのが妥当とされているので、大家も「おおやけ」と読むことができよう。「みやけ」の語が「みや」と「け」が合致したものとすれば、「おおやけ」も「おおや」と「け」が結合したものとみられる。そこで「おおや」は一般に直接の支配者を称したもので、「け」は家、転じて「料」の意に用いられたのではないかと考えられている。和銅四年（七一一）三月六日の多胡郡建置のとき、甘楽（かんら）郡から割かれた四郷の一つである（続日本紀）。したがって甘楽郡成立のとき、大家郷は支配者の居住地であったものと考えられる。

大家郷
おおやごう

• 広島県：備後国
• 安那郡
• 大家郷

「和名抄」高山寺本に「大家」、東急本に「天家」と記されともに訓を欠く。「福山志料」は「天家或云大家ノ誤」とするが、平城宮出土木簡に、表に「備後国安奈郡」、裏に「大家里白米五斗」とするものがあり、この説は認められる。「日本地理志料」は「日本書紀」安閑天皇二年五月九日条にみえる「婀娜国胆殖屯倉」について「家与胆殖邦訓相近」とし、備中小田（おだ）郡大江（おおえ）村と同村に属する上稲木（かみいなぎ）・下稲木両村（現岡山県井原市）に比定する。

大家郷
おおやけごう

• 新潟県：越後国
• 古志郡
• 大家郷

「和名抄」諸本は訓を欠く。「日本地理志料」は武蔵国大家郷の例に従い、「於保也介」と読む。「延喜式」兵部省諸国駅伝馬条に北陸道大家（おおや）駅がみえる。「大日本史国郡志」は「今与板城、旧名大津、属三島郡吉川荘」と記す。

大家郷
おおえごう

• 大分県：豊前国
• 下毛郡
• 大家郷

「和名抄」下毛郡七郷の一。諸本とも訓を欠くが、武蔵国入間（いるま）郡の同名郷には「於保夜計」（高山寺本）、「於保也介」（東急本）、同じく石見国迩摩（にま）郡の同名郷には「於保伊倍」（東急本）の訓がある。しかし当郷を継承すると思われる中世の大家郷に関して、建長三年（一二五一）一〇月八日の某田地譲状（永弘文書）に「をゝ江」、年月日未詳の宇佐宮諸社役注文案（到津文書）に「おうゑ」などとあり、「おおえ」とよんだか。

大家郷
おおやけごう

• 埼玉県：武蔵国
• 入間郡
• 大家郷

「和名抄」所載の郷。同書高山寺本に「於保夜計」、東急本・元和古活字本に「於保也介」、名博本に「ヲホヤケ」の訓がある。「万葉集」巻一四に「入間道の大家（おおや）が原のいはゐ蔓引かばぬるぬる吾にな絶えそね」とみえる。「大日本史」国郡志・「日本地理志料」「大日本地名辞書」は現大井（おおい）町から富士見市にわたる一帯とし、「風土記稿」「埼玉県史」は現坂戸市の森戸（もりど）を中心とする一帯とする。

大家郷
おおいえごう

• 鹿児島県：薩摩国
• 出水郡
• 大家郷

「和名抄」所載の郷。同名の郷は諸国に計七あり、武蔵国の大家郷には「於保夜計」（高山寺本）、「於保也介」（東急本）、石見国の大家郷には「於保伊倍」（東急本）の訓がある。当大家郷もいずれかであろう。仮に「於保伊倍」を採っておく。「大日本地名辞書」は不詳としつつも、郡家の地かとし、中出水（なかいずみ）村（現出水市）などにあたるかとする。

大家郷
おおえごう

• 島根県：石見国
• 邇摩郡
• 大家郷

「和名抄」所載の郷。諸本とも大家と記し、東急本・元和古活字本は「於保伊倍」の訓を付す。現大田市大代（おおしろ）町大家を遺称地とする。現同市大代町大家、現温泉津（ゆのつ）町井田（いだ）地区、現江津市波積（はづみ）町南（みなみ）（大日本地名辞書）、または現大田市祖式（そしき）町・大代町地区、現温泉津町井田地区に比定される（島根県史）。

大家郷
おおやごう

• 長崎県：肥前国
• 松浦郡
• 大家郷

松浦郡内の郷で、「和名抄」には記載がない。「肥前国風土記」松浦郡条に「大家島」とみえ、郡の西にあると記される。景行天皇が九州にいた際、当地に大身と称する土蜘蛛がおり、つねに天皇の命を拒否したためこれを誅して滅ぼしたが、これ以降は白水郎らがこの島に来て宅を造作して住んだという。

出典　平凡社「日本歴史地名大系」