精選版 日本国語大辞典 「大槌」の意味・読み・例文・類語
おお‐づちおほ‥【大槌】
- 〘 名詞 〙
- ① 大型の槌。間(あい)の槌。
- [初出の実例]「材木はこちのものさらば取て帰らんと門口の柱から大槌にて打はづせば」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)二)
- ② ⇒おおつち(大土)
岩手県南東部、上閉伊郡(かみへいぐん)にある町。陸中海岸の大槌湾、船越(ふなこし)湾に臨む。1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)金沢村と合併。三陸鉄道リアス線、国道45号が通じる。三陸沿岸道路の大槌インターチェンジがある。大槌湾内の安渡(あんど)は良港として古くから開発され、近世には盛岡藩最大の廻漕(かいそう)問屋前川善兵衛(吉里吉里善兵衛(きりきりぜんべえ))の江戸との取引の基地となった。主産業は大槌漁港を中心に、ホタテ、ワカメ、ノリ、カキの湾内養殖が盛ん。また大槌川、小槌川は南部鼻曲(はなまがり)サケの産地。大槌川さけ・ます人工孵化(ふか)場や東京大学大気海洋研究所大槌沿岸センターがあり、サケ稚魚の追跡調査などを行っている。片寄せ波で知られる浪板(なみいた)海岸は三陸復興国立公園(旧、陸中海岸国立公園)の一部。面積200.42平方キロメートル、人口1万1004(2020)。
[川本忠平]
〔東日本大震災〕2011年(平成23)の東日本大震災では大津波(痕跡高最大13.7メートル)に襲われ、住宅・市街地面積の52%が浸水し(大槌町「大槌町復興レポート」平成28年4月1日)、死者855人・行方不明419人、住家全壊3579棟・半壊588棟を数えた(消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第159報)」平成31年3月8日)。町では漁船や養殖施設などの復興に力を入れ、2018年3月現在ウニ、ワカメ、アワビなどの漁獲量、水産加工業者数などは震災前の水準に戻りつつある。
[編集部 2019年9月17日]
『『大槌町史 上巻』(1966・大槌町)』
岩手県東部,上閉伊(かみへい)郡の町。人口1万5276(2010)。陸中海岸のほぼ中央に位置し,南は釜石市,西は遠野市に接する。北上高地の支脈が急斜面となって海に迫り,大槌・小槌両川が東流して大槌湾に注ぐ。海岸部をJR山田線,国道45号線が走る。湾内の安渡(あんど)は天然の良港で,近世は江戸との海産物取引の基地となっていた。産業の中心は水産業で,イカなどの沿岸漁業とホタテガイ,ワカメの養殖が盛ん。大槌川は南部鼻曲りサケの産地として知られ,12月の川開きではサケの即売が行われる。町立サケ・マス人工孵化(ふか)場,東京大学海洋研究所付属国際沿岸海洋研究センターがある。海岸線は風光明美なリアス海岸で,返し波のない〈片寄せ波〉で有名な浪板海岸がある。2011年3月の東日本大震災では,死者行方不明1730人,全壊住宅3680戸にのぼった。
執筆者:松橋 公治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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