大陸法(読み)たいりくほう(英語表記)continental law

日本大百科全書(ニッポニカ)「大陸法」の解説

大陸法
たいりくほう
continental law

英米法に対し、フランスやドイツなどヨーロッパ大陸の法をいう。イギリスでは、近年法典化の努力がなされてはいるが、基本的には長い間の判決の集積が法的拘束力をもつ(判例法主義)。これに対して、ヨーロッパ大陸では、法学者がユスティニアヌス法を基礎に、法概念を整理し、法の体系化を行い、それに基づいて法典がつくられた。したがって、大陸法は、法典の解釈を通じてその運用がなされてきた(制定法主義)。中央集権が早くから行われたフランスでは、早くに法の統一が成し遂げられ、1804年にはフランス民法典が制定され、これがイタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、ポルトガルなどの諸国へ継受された。これに反して中央権力が弱く地方分権的だったドイツでは、法の統一は学問(パンデクテン法学)に頼らざるをえず、ようやく19世紀末に全ドイツに適用される民法典が編纂(へんさん)され、これらの法典はハンガリー、旧ユーゴスラビア、旧チェコスロバキア、ポーランドなどに継受された。また1907年にはスイス民法典がつくられた。

 日本の民法典は、フランス民法の影響もあるが、ドイツ民法(第一草案)を継受したものである。その他、明治時代に制定された民事訴訟法、商法などの法典はドイツ法の影響を受けたものが多い。第二次世界大戦後は、英米法、とくにアメリカ法の影響を強く受けるに至った。ちなみに日本の独占禁止法はアメリカの反トラスト法を参考にしたものである。なお、英米法諸国において法典化が進めば、大陸法と英米法といった対立概念の実益が将来失われることも予想される。

[佐藤篤士]

『ローソン著、小堀憲助他訳『英米法とヨーロッパ大陸法』(1971・日本比較法研究所)』

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百科事典マイペディア「大陸法」の解説

大陸法【たいりくほう】

ドイツ,フランスなどを中心とするヨーロッパ大陸諸国の法。英米法に対する。ローマ法の流れをくみ,近代自然法思想を背景とする。形式上は成文法主義(法典化)が特色。日本の近代法体系はおもに大陸法にならっている。
→関連項目憲法裁判所国家訴追主義コモン・ロー市民法フランス民法

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精選版 日本国語大辞典「大陸法」の解説

たいりく‐ほう ‥ハフ【大陸法】

〘名〙 ドイツ、フランスなど、ヨーロッパ大陸で発達した法律。成文法を中心とする点に特色があり、判例法、慣習法を中心とする英米法に対する。

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世界大百科事典 第2版「大陸法」の解説

たいりくほう【大陸法 civil law】

フランス,ドイツなど西ヨーロッパの諸国の法を総称したことばである。これを大陸法というのは,島国であるイギリスの法と対比するためである。もっとも英米諸国では今日でも大陸法ということばの代りに,シビル・ローcivil lawということばを使い,これとコモン・ローcommon lawを対比するほうが一般的である。 大陸法はローマ法を共通起源としている。中世末期から近世初期にかけてヨーロッパ各国はローマ法を継受し,共通の地盤の上で法が発展した。

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世界大百科事典内の大陸法の言及

【英米法】より

コモン・ローという言葉がこの意味で用いられることもある。各国の法は,その歴史と特徴から,いくつかのグループ――法系――にまとめることができるが,英米法は大陸法と並んで現在の世界における二大法系の一つである。 英米法と大陸法の間の違いの一番大きな淵源は,ドイツ法,フランス法などヨーロッパ大陸の諸国の法が,程度の差こそあれローマ法の影響を強く受けつつ発達してきたのに対し,イギリス法は,ローマ法の影響を限られた範囲でしか受けなかったという点にある。…

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