日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナポレオン法典」の意味・わかりやすい解説
ナポレオン法典
なぽれおんほうてん
Code Napoléon
ナポレオンが4人の編纂(へんさん)委員(トロンシェ、ビゴ・ド・プレアムヌー、マルビル、ポルタリス)に起草を命じ、強大な政治力を利用して制定したフランス民法典。1804年公布。3編2281条(1975年に2か条付加されて現在は2283条)からなる。この法典のとっている所有権の絶対性、契約自由の原則、過失責任主義などの立場は、近代市民法の基本的原理として、その後に制定された各国の民法典の模範となった。日本の現行民法にもナポレオン法典は旧民法を通じて強い影響を与えている。制定以後、さまざまな立法による修正や判例法による補充を受けてきたが(ことに家族に関する部分は1960年以降の数次の改正で全面的に改まっている)、法典そのものは今日でも生き続けている。なお、ナポレオン法典という名称は、まだ廃止されていないが、19世紀末ごろから「民法典」Code civilという名称が公式にも用いられるようになってきており、今日ではこの名称を用いるほうが普通である。
また、ナポレオンの制定した五つの法典(民法典のほか、商法典、民事訴訟法典、刑法典、刑事訴訟法典)を総称してナポレオン法典とよぶこともある。
[高橋康之]