天津(読み)テンシン

デジタル大辞泉 「天津」の意味・読み・例文・類語

てんしん【天津】

中国河北省東部の河港都市。政府直轄市。海河支流の合流点にあり、水陸交通の要衝。貿易・商業や紡織・製鋼などの工業が盛ん。人口、行政区750万(2000)。ティエンチン

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精選版 日本国語大辞典 「天津」の意味・読み・例文・類語

てんしん【天津】

  1. [ 1 ]
    1. [ 一 ] 中国華北地区東北部の都市。大運河・白河などの合流点にあたり、華北水運の中心として貿易がさかん。第二次世界大戦前には日・英など八か国の租界があり、また民族資本による紡績業の中心地であったが、大戦後は総合的商工業都市に変貌した。テンチン。
    2. [ 二 ] 中国の星座。箕(き)と斗の間にある銀河の星。はくちょう座α(アルファ)、ζ(ゼータ)、δ(デルタ)など九星を含む。天津九星。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙てんしんすいみつとう(天津水蜜桃)」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天津」の意味・わかりやすい解説

天津
てんしん / ティエンチン

中国、華北地区の大都市。行政上は北京(ペキン)、上海(シャンハイ)、重慶(じゅうけい)とともに省と同格の政府直轄市である。和平(わへい)区、薊州(けいしゅう)区、浜海(ひんかい)新区など16市轄区からなる。面積1万1917平方キロメートル、人口1562万1200(2016)。渤海(ぼっかい)湾岸に面し、海河河口より約50キロメートル上流、大清河、子牙河(しがが)、永定河など、海河支流の合流点付近の右岸一帯に市の中心部がある。海河の内陸水運や京山線(北京―山海関(さんかいかん))、京滬(けいこ)線両鉄道の連絡する交通の結節点をなす。華北最大の貿易港で、北東120キロメートルにある首都北京の海への門戸となっている。海河河口の天津新港は、1952年に完成し、1万トン級の船舶の接岸できるバース(係留地)は100以上あり、さらに海河の改修によって天津市街まで3000トン級の船舶が遡航(そこう)できるようになっている。市中心部の東約13キロメートルに天津浜海国際空港がある。

 周辺の海河下流一帯はワタ、小麦の産地で、薊州区付近では有名な天津栗(ぐり)や柿(かき)の生産も多い。北東に開灤(かいらん)炭田を控え、南東に大港油田を擁している。また石灰岩、耐火れんがなどの原料も産し、海河下流域には長蘆(ちょうろ)塩場が広がり、塩の生産も巨額に上る。華北、モンゴル地方一帯との交通の便もよく、これらの優れた交通位置が、天津に商工業の発展をもたらし、大都市を形成させる原因となっている。工業ではとくに紡織工業の比率が高く、じゅうたんは世界的に有名である。伝統的に製紙、ゴム、たばこ、マッチ、食品などの工場が多い。他方、製鋼、機械、石油、化学など重工業も急速に発展しており、さらに、電機・車両工業のほかカメラ、時計、計算機など精密機械工業も盛んである。

 南開大学、天津大学、天津医科大学、天津音楽学院などの高等教育機関や研究所、図書館、博物館、労働文化宮など研究・文化施設も少なくない。また、体育館、競技場なども充実しており、スポーツことにサッカーが盛んなことは全国的に名高い。

[船越昭生]

歴史

宋(そう)代に泥沽海口(でいこかいこう)、金代に信安海(しんあんかいじゅ)、元代に直沽(ちょくこ)または海津鎮(かいしんちん)といわれた小港であった。元代に、江南からの税糧を毎年海運してここに陸揚げし始めてから急に発展した。明(みん)代の1404年天津衛を設け、周囲6キロメートルの城郭を築き、江南から大運河で輸送してくる税糧の中継地としてさらに発展して都市的様相を示し、清(しん)代には天津県を置き、天津府の首邑(しゅゆう)となった。清末、1792年と1816年の二度にわたりイギリスによって開港を迫られ、1858年アロー戦争に際してイギリス・フランス軍の攻撃を受け、1860年に占領され、アメリカ、ロシアも加わった天津条約によって開港された。1870年フランス排撃運動が起こって領事ら20名が殺害されるという事件があり、1900年には義和団と日・英など八か国連合軍との兵火を被り、城壁が取り払われた。1904年日露戦争のとき両国の軍需物資の調達地となってから、対外貿易港として栄え、租界も設けられて国際都市化した。中華民国時代には一時、直隷省都となったが、列国の利害が絡む内戦の舞台となることが多く、日中戦争に際しても1937年日本軍に占領された。

[星 斌夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「天津」の意味・わかりやすい解説

天津 (てんしん)
Tiān jīn

中国の四大中央直轄市の一つ。華北平原北端に近い渤海湾沿岸に位置する。海河水系に属する北運河(潮白河),永定河,大清河,子牙河,南運河(衛河)の五大支流が会合,海河となって海に入る地点にあたる。13区5県からなり,北端の薊県は万里長城に達する。渤海沿岸は古来海進,海退が繰り返され,数本の貝殻堤遺跡が残り,歴史時代にも現市街地の西方まで海岸線が後退していたこともある。漢代に現在の天津の北部で製塩が盛んとなり,唐代には軍糧城が軍事用糧食の集積所とされた。金代に直沽寨がおかれ,元代に直沽寨は海津鎮と改称され,静海県に属した。明の永楽年間(1403-24)天津衛が置かれ,清の雍正年間(1723-35)には天津県が設置され天津府治となった。隋代から水運が盛んとなり,とくに元代以来大運河に沿う内陸水運の要衝として発展した。1860年(咸豊10)帝国主義諸国の要求により,清朝は開港場とし,租界が設けられ,以来外資経営の紡績等の工場が立地,外国商社も多く進出し,とくに日本の経済侵略の一拠点とされた。海港としては海河の最下流の塘沽(タンクー),大沽(タークー)の両河口港が利用された。1928年天津特別市が設けられたが,30年天津市に改められた。49年の解放後中央直轄市となった。その後58年河北省の直轄市となったが,67年再び中央直轄市となった。市域の面積1万1300km2,人口1007万(2002)。

 解放前は紡織,食品等外資系企業を主とする軽工業が見られるにすぎなかったが,解放後鉄鋼,電子,機械,紡織,化学,計器,造船などの工業が急速に発展し,南部の北大港地区を中心に大港油田が開発された。当市沖合の渤海にも海底油田があり,石油,天然ガスの埋蔵が見られる。また化学工業原料として海岸部の長蘆塩田で塩が生産される。伝統工業では天津地毯が有名。周辺諸県は低湿地が多く,小站米で知られる日本種の水稲作が盛んで,また天津水蜜桃,板栗(甘栗用の栗,いわゆる天津甘栗),洋梨などの果樹作や野菜栽培でも以前から有名であった。さらに塘沽等は渤海の海面漁業基地でもある。解放後,海河河口に建設された天津新港は中国最大の人工港湾で,大型船が接岸可能。鉄道交通は京哈線(北京~ハルビン)と京滬(けいこ)線(北京~上海)の二大幹線の分岐点に当たる。北京~天津~塘沽間に1993年高速道路が開通した。市内には南開,天津両大学をはじめ科学研究機関も多い。
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百科事典マイペディア 「天津」の意味・わかりやすい解説

天津【てんしん】

中国,河北平原北東部にある中央政府直轄市,大商工業都市。2010年,国家五大中心都市の一つに指定された。海河下流の河港で,古来大運河など華北水運の中心。1858年のアロー戦争で清朝は英仏連合軍に敗れ天津条約を締結,1860年北京条約により開港されてから,北京に直結する外港として,上海と並ぶ大貿易港に発展。現在では,北京市との間を高速道路,高速直通列車のほか,北京・天津高速鉄道によって結ばれている。また,京哈(北京〜ハルビン)・京滬(けいこ)(北京〜上海)鉄路の交差点で,織物,製粉,製塩,化学,搾油などの工業も盛ん。羊毛,豚毛,綿花,ラッカセイなどを輸出。天津新港(旧塘沽(タンクー))は中国最大規模の港の一つとなっている。南開大学,天津大学など,教育機関も多い。1860年以後は,英・仏・独・日本・オーストリア・イタリア・ベルギー・ロシア8国の租界が海河両岸におかれ,植民地侵略の拠点とされた歴史がある。817万人(2014)。
→関連項目大沽中華人民共和国

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「天津」の解説

天津(てんしん)
Tianjing

中国河北省の東部にある直轄市。明代に天津衛が創設されたのに始まる。1858年以来20に近い条約,協定などがここで結ばれ,8カ国の租界が設けられ,上海と並ぶ国際都市となった。現在華北の水陸交通の要地,重工業都市として栄えている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「天津」の解説

天津
てんしん
Tiānjīn

中国河北省東部,海 (ハイ) 河の両岸にまたがる都市
大運河と海河の接点で,水陸交通の要地を占め,明代の1404(永楽2)年,天津衛が創設されたのが名のおこり。明〜清代を通じて北京の外港として発達。1860年北京条約によって開港。義和団事件後,列強が租界を設け,以後,国際都市として繁栄した。現在四大中央直轄市の1つ。

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世界大百科事典(旧版)内の天津の言及

【天津小湊[町]】より

…千葉県南部,安房郡の町。1955年天津町と小湊町が合体。人口8172(1995)。…

※「天津」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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