天然更新(読み)テンネンコウシン(英語表記)natural regeneration

デジタル大辞泉 「天然更新」の意味・読み・例文・類語

てんねん‐こうしん〔‐カウシン〕【天然更新】

自然に落ちた種子から発生した稚樹や、根株から芽を出したひこばえを育てる造林法。天然造林

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精選版 日本国語大辞典 「天然更新」の意味・読み・例文・類語

てんねん‐こうしん‥カウシン【天然更新】

  1. 〘 名詞 〙 天然の力を利用して後継樹を育てる造林法。自然に落ちた種子から発生した稚樹、または根株から芽を出した蘖(ひこばえ)を育てる法。天然造林。

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改訂新版 世界大百科事典 「天然更新」の意味・わかりやすい解説

天然更新 (てんねんこうしん)
natural regeneration

自然の力を利用して林を仕立てること。林を仕立てようとする区域の中に落ちた種子が発芽して定着する場合(天然下種更新)が最も普通で,狭義ではこれを天然更新とよぶ。広義では,切株からの萌芽が大きくなる場合(萌芽更新),下枝が地面につき発根して独立の林木に生長する場合(伏条更新),タケの地下茎からたけのこが発生して育つ場合(地下茎更新)も含められる。

 天然下種更新には,種子の親木の位置によって側方下種と上方下種が区別されているが,さらに両者の中間的な林縁下種とよばれる方法もある。いずれの場合にも,更新面に落ちた種子がうまく地表面に達し発芽しやすいように,地表を搔き起こしたり,発生した稚樹の発育,生長を促すような補助的な手入れが必要である。また樹種によって異なるが,林内に前もって発生していた稚樹(前生稚樹)をうまく育てることに力点をおく場合と,伐採してから発生する稚樹(後生稚樹)がうまく育つようにしなければならない場合とがある。側方下種は,更新面にある林木をすべて伐採(小面積皆伐)し,更新を側方の林分から飛んでくる種子に依存する方法である。更新面が明るいからアカマツのような陽性の樹種の更新に適しているが,伐採する幅が広くなると種子の散布にむらができるので,皆伐する幅には限度(40~70m)がある。上方下種は,更新しようとする区域の林木を切りすかして残した木からの種子に依存する方法で,稚樹が健全に育ちはじめたころを見計らって残されていた林木を徐々に伐採する。側方下種に比べて種子がまんべんなく落ちる,気象の害がおきにくい,雑草木の生長を抑えるなどの利点があり,天然下種更新の多くは上方下種による。傘伐作業,択伐作業(皆伐)とよばれる更新法はいずれも上方下種によっている。地床条件が好適なところでは,シラベ,アオモリトドマツの場合,前生稚樹が20万本/haもあることがあり,傘伐によって容易に更新できる。天然下種更新は,森林をいちじるしく壊すことなく次の代の林を仕立てる方法で,林地を裸出することが少ないから地力の維持に適しており,気象や生物による被害をうけにくく,また何よりも樹種の選択を誤るおそれがないなどの利点がある。しかし反面,切りすかし方や切った木の運びだし方が難しく,期待通りに結実しないと稚樹が十分に発生せず,予定した時期に確実に更新させることが難しいなどの短所がある。萌芽更新はいわゆる低林を仕立てる場合にとられていた方法で,萌芽する性質の強い樹種でしか行えない。広葉樹は萌芽する性質をもつものが多いが,日本ではクヌギ,ナラ類,カシ類,シイ類などで行われる。若い木の方が萌芽もよく,発生した萌芽の生長もよいが,1株からの萌芽本数が多すぎる場合には抜き切りを行う。従来,低林はおもに薪炭材を生産するものであったが,日本では昭和40年代後半に至ってその需要がほとんどなくなった。しかし近年,シイタケ栽培用の丸太を生産する面で見直されている。伏条更新は,多雪地帯のヒバアスナロ),スギなどの天然林でしばしばみられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天然更新」の意味・わかりやすい解説

天然更新
てんねんこうしん

林業で、種子が自然に落ちて芽生えた稚樹、切り株からの萌芽(ほうが/ぼうが)、地下茎からのタケノコなどを利用して次代の林をつくる方法であるが、一般には種子による下種(かしゅ)更新をさす。天然更新した林は多くの樹種が混在した混交林をつくる場合が多く、単一種の病虫害の大発生が抑制される利点があるばかりでなく、気象害への抵抗性が増し、地力の維持に適する長所がある。また、天然更新は、深根性の樹種や根を切るとかわりの根が出にくい樹種、たとえばマツ類やモミ類にとって甚だ有利である。

 天然更新の成績は母樹の配置と稚樹の育て方で決まる場合が多い。陽性樹種のマツ類は更新させる場所の周りに母樹を残しておく方法がとられるが、更新させる場所が大きく母樹林からの距離が遠くなると、散布される種子の分量が少ないばかりでなく、周りの母樹林による更新した稚幼樹への防風効果などが不十分になる。若い間弱い光に耐えるシラベ、トドマツ、ブナなどでは、更新させる場所にある林木がまばらに残るように伐(き)って林内に稚樹を発生させ、稚樹が大きく健全に育ったあと残りの林木を伐る方法がとられる。ブナ林の更新では、伐採地に適当本数の母樹を残し、林床に飛散した種子の発芽とその後の生育を促す目的で、地表をかきおこす方法がとられることもある。天然更新は、林地の条件や作業のやり方で更新成績が変わりやすいので、人工造林が困難な地域に限って実行される。

[蜂屋欣二・藤森隆郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天然更新」の意味・わかりやすい解説

天然更新
てんねんこうしん
natural regeneration

天然の力を利用して仕立てる造林法。自然に落下した種子から稚樹を発生させ,林の更新をはかる天然下種更新と,切り株,根,地下茎などから萌芽や伏条を発生させる萌芽更新とに大別される。前者はおもに用材林に,後者はおもに薪炭林に対して行われる。天然更新のための伐採法は残木の有無によって皆伐,傘伐,択伐の3種に分類される。天然下種更新の基礎になる種子の散布距離は,樹種,風,地形などの影響によって異なるが,赤松,黒松,はんの木類などでは母樹の樹高の3~5倍,かば,にれなどは4~8倍といわれる。

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農林水産関係用語集 「天然更新」の解説

天然更新

植林等の人為によらずに森林の造成を行うこと。自然に落ちた種子の発芽や樹木の根株からの萌芽等による方法がある。必要に応じて、ササ類の除去等稚樹の成長を助ける作業を行う。

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世界大百科事典(旧版)内の天然更新の言及

【人工林】より

…人工林造成の目的は用材,薪炭材などの木材生産であるが,荒廃地,崩壊地の復旧,侵食防止のための砂防林,防風のための防風林,海岸の保全,防潮のための海岸林など特別の目的をもつものも含まれる。 森林をつくる方法は大別して人工造林(造林)と天然更新にわけられる。人工造林は人が種子,苗,挿穂などの造林材料を林地に定着させて次代の森林をつくる方法であり,天然更新は天然にそこにある母樹の種子や切株からの萌芽などを利用育成して次代の森林をつくる方法をいう。…

※「天然更新」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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