林を一時に全部切ること。木材を生産するために林を育てる場合,林全体を切って新たに次の世代の木を植えこむ方法と,一部の木を切りながら次の世代の木を逐次育てていく方法がある。前者の場合には最終的に林全体を切る年が予定されており,これを伐期と呼んでいる。伐期に達した林を切ることを間伐に対して主伐と呼んでおり,皆伐作業では主伐,間伐がはっきり区別できる。実際には,ごく細い木,幹が空洞になった木,また熱帯林で市場価値のない樹種などが残されることがある。また伐採した跡に種子を飛散させる目的で親木が1haに30本内外残されることもある。皆伐は,切る作業も切った木を運び出す作業も容易であるが,急に土地が露出するため強い雨が降ると表土や腐植土が流失しやすくなるし,一斉に苗木を植えることができるという点で作業は簡単であるが,植栽後数年の間は各種の気象害をうけやすく,また大面積に同じ樹種を植えると,ひとたび害虫や病気が発生すると拡がりやすいなどの問題がある。また近年は大面積を皆伐すると自然の景観が損なわれることも指摘されている。このような欠点を軽減するため,群状または帯状に小面積を皆伐する方法もある。
皆伐に対して択伐selection cutting,傘伐shelterwood cuttingと呼ばれる方法がある。前者が成熟木の伐採・収穫を一義的に考えるのに対して,後者は次代の木をうまく育てることに主眼をおいている。択伐は,大小老幼の樹木が混生している林の中で,主に生長が衰えはじめたものや,材に欠点がありそうな木を抜き切りし,残された木が健全に育ち,また稚樹(林の中に自然に生えてくる小さな木)が生えやすいように考える。したがって択伐は数年または十数年ごとに繰り返すのが普通で,1回に切る本数はあまり多くなく,主伐と間伐の区別がない。森林を長年にわたって育てていくには理想的であるが,稚樹の生えやすいことが必須条件であり,伐採や切った木を運び出す際に稚樹を傷めやすいことや単位面積当りの1回の収入が少ないなどの難しい点がある。一方,傘伐は樹種,樹齢がそろった林(一斉林)が伐期に達した時,皆伐のように一時に全部を切らず,数回に分けて切る方法で漸伐とも呼んでいる。親木の傘の下に稚樹を育てる伐採方法という意味で,段階的に伐採を繰り返してほぼ同じ樹齢の林をつくる方法である。最初の伐採は,残す木の樹冠にできるだけ光をあて実がなりやすくするとともに,林の中にも光をあてて,地上にたまっている落葉落枝の分解を促すのがねらいで,必要に応じて数回行う例もある。うまく結実すると2~3年で稚樹が一斉に生えるので,その生長に応じて残っている木を逐次切り倒して新しい林に切り替えていく。何回も伐採する必要があるために作業が難しく,とくに稚樹が生えた後の伐採で稚樹を傷めやすいことや残された木が風の害を受けやすいなどの欠点がある。この方式を群状に行うものを画伐という。
執筆者:浅川 澄彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
森林を構成する林木の全部または大部分を一時に伐採し収穫すること。一斉に伐採するので、伐採、造林の技術が比較的容易で確実であり、その時点での経済性も優れているため、林業とくに人工林の経営では広く行われている。しかし皆伐すると、林地が一時に露出して肥沃(ひよく)な表土や腐植が流出し、林地の生産力を害したり、跡地の造林地が気象災害や病虫害を受ける、生態系を破壊するといった弊害がおきやすい。とくに皆伐を大面積に行ったり短期間に頻繁に繰り返したりすると、その弊害も著しい。そのため、土地の条件に応じて皆伐面積の制限、皆伐繰り返し期間の延長、皆伐以外の伐採方法の採用などを考慮する必要がある。
[蜂屋欣二]
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