古代卜占の一種で,〈布斗麻邇〉とも〈太兆〉とも書く。記紀には伊弉諾(いざなき)尊・伊弉冉(いざなみ)尊が国土生成のおり,いかにして良き子を得ることができるか問うたところ,天神(あまつかみ)が太占によってうらなって教えてくれたとみえる。その方法は,《古事記》天岩屋戸の段に〈天香山の真男鹿(まおしか)の肩を内抜きに抜きて,天香山の天波波迦(あめのははか)を取りて,占合(うらない)まかなはしめて〉とあるように,鹿の肩甲骨を波波迦(ははか)(カニワザクラのこと,ウワミズザクラの古名という)にて焼き,割れ目の模様でうらなうものであった。卜骨の出土例は弥生時代からあり,そのほとんどがニホンジカであるといい,これを裏付けている。令制以降は鹿卜から亀卜へと変わった。群馬県の貫前(ぬきさき)神社等では,神事として鹿卜の占法が現在も行われる。
→卜骨
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
卜占(ぼくせん)の一種。太は称辞。古代人は人事・自然現象ともに神意により発現すると考え,その神意をうかがうことを太占といった。牡鹿の肩骨を波波迦(ははか)の木皮を炭火にしたもので焼き,町形に現れる割れ目により占うのが通例である。肩焼もしくは亀卜(きぼく)の対で鹿卜(ろくぼく)ともいい,天児屋根命に奉仕させたと伝えられる。「日本書紀」に伊奘諾(いざなき)尊と伊奘冉(いざなみ)尊が蛭児(ひるこ)を生んだとき,太占を行ったとみえており,古い時代には盛んに行われたが,時代が降るにつれてすたれ,亀卜に代わっていった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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古代に行われた卜占(ぼくせん)の一種。その方法は牡鹿(おじか)の肩骨を波波迦(ははか)(上溝桜(うわみずざくら)の古名)の木皮で焼き、そこにできた割れ目の模様によって占うのである。『魏志倭人伝』(ぎしわじんでん)に「骨を灼(や)きて以(もっ)て吉凶を占う」とあるのは、太占のことを述べたものである。のち中国より亀卜(きぼく)の法が伝わるに及び、しだいに廃れた。
[石井良助]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…【三浦 国雄】
【日本】
〈うらない〉という語は,隠された裏の世界を知って表の世界の事象と照合させる〈裏合い〉に由来すると一般に考えられているが,木の幹に対する末(うれ,うら)つまり小枝の先端部の変化によって占いをしたことに由来する語との説もある。日本では,鹿の骨を用いた太占(ふとまに),中国から導入された亀甲を焼いてする亀卜,陰陽五行説による易占などが,国家的レベルで行われた占いであった。律令制のもとでは亀卜は神祇官の卜部氏が管掌し,易占や星占いなどは陰陽寮の陰陽師・宿曜師が管掌し,官卜寮占と併称された。…
※「太占」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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