日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウワミズザクラ」の意味・わかりやすい解説
ウワミズザクラ
うわみずざくら / 上溝桜
[学] Padus grayana (Maxim.) C.K.Schneid.
Prunus grayana Maxim.
バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木。高さ10~20メートルになる。葉は互生し、長楕円(ちょうだえん)形。長さ6~10センチメートル、先は尾状にとがり、基部は円く、縁に鋭い鋸歯(きょし)がある。花は4~5月に葉が開いてから咲く。長さ10~20センチメートルの総状花序に白色、径6~10ミリメートルの小花が多数集まる。花弁は5枚、雄しべは花弁より長く、花序の軸に数枚の葉がある。果実は卵円形で先がややとがり、7~8月に黄赤色から黒紫色に熟す。北海道南西部、本州、四国、九州に自生し、中国にも分布する。材は粘りが強く、道具の柄や器具材とし、樹皮や根を染料に用いる。新潟県地方ではつぼみの花穂や緑色の果実を塩漬けにして、「あんにんご」とよんで食べる。シカの肩の骨を焼いて占いをする際に用いられたハハカの木(『古事記』)はウワミズザクラである。近縁種のシウリザクラは本州中部以北、北海道に野生し、南千島、ウスリー、サハリンにも分布する。葉の基部が心臓形である。
[小林義雄 2019年12月13日]