日本大百科全書(ニッポニカ) 「太平洋ゴミベルト」の意味・わかりやすい解説
太平洋ゴミベルト
たいへいようごみべると
Great Pacific Garbage Patch
アメリカのハワイ北西部ミッドウェー環礁付近の北太平洋上で、ロープやブイをはじめとする大量の漂流ゴミが集まっている海域の呼称。およそ西経135度から155度、北緯35度から42度の範囲にわたり、その面積は日本の国土の4倍近くに及ぶ。漂流ゴミの多くは陸地から流れ出たもので、日本を含めたアジア東岸を発生源としたゴミが過半を占め、ほとんどは日本、中国、韓国などの東アジア諸国から出たものだとの指摘もある。これらのゴミのなかで、深刻な被害が懸念されているのは、漂流ゴミのおよそ4分の3を占めるとされる硬質プラスチックである。分解されにくく、徐々に劣化・崩壊し、無数の細片となる。これらのプラスチック片を誤食することにより、ウミガメやアホウドリに被害が発生しており、生態系に悪影響を及ぼすという見方もある。
さらに東日本大震災の影響が懸念されている。津波によって150万トン程度とされる多種多様なものが海に流され、そのなかには油性廃棄物や化学薬品なども含まれる。漂流するがれきは、最終的に太平洋ゴミベルトに集積することになるが、通常の海洋ゴミとはタイプの異なるゴミが大量、かつ急激に押し寄せたときに、環境や生態系がどのようなダメージを受けるかは予測できない。2011年4月にハワイ大学国際太平洋研究センター(IPRC:International Pacific Research Center)は震災がれきの漂着先についてのシミュレーション結果を発表した。1年後の2012年にハワイ諸島の北側に近づき、2014年にはアメリカ西海岸に達し、さらに南太平洋を逆方向に進んで2015年3月に太平洋ゴミベルトに流れ込むと推定した。だが、風の影響を受けやすい種類のがれきは予測よりも早く、2012年に西海岸まで到達し、アメリカ海洋大気局(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)は2012年7月、既に漂着したがれきの清掃費用などとして、アラスカ、ワシントン、オレゴン、カリフォルニア、ハワイの5州に計25万ドルを拠出すると発表した。なお日本政府は漂着がれき処理の見舞金としてアメリカに500万ドル、カナダに100万カナダドルを送っている。
太平洋ゴミベルトが形成されるメカニズムは、北太平洋の4海流(北太平洋海流、カリフォルニア海流、北赤道海流、黒潮)によって時計回りの大きな還流(北太平洋旋廻(せんかい))がつくられ、これにのって浮遊物も北太平洋を大きく旋回漂流、さらに海面を吹く偏西風と貿易風の影響を受けて、高緯度の浮遊ゴミは南に、低緯度のものは北に運ばれて、ゴミは中緯度帯に集まると考えられている。規模は異なるものの、こうしたゴミの集積海域は日本とハワイの間や南アメリカのチリ沖、南北大西洋などでも確認されている。
[編集部]