中国の古代神話に登場する女神。彼女は天地を補修し、人類を創造した造物主として知られている。『淮南子(えなんじ)』によると、太古に天を支えていた4本の柱が折れると大地はずたずたに裂け、至る所に大火災が発生し、洪水が大地を覆い、さらに猛獣や怪鳥が横行して人々を苦しめたという。そこで女媧は、五色に輝く石を溶かして天の欠けた部分に流し込み、これを補った。また大亀(おおがめ)の足を切り取って天と地を支え直したので、地上にはふたたび平安がよみがえったという。一方『風俗通義(ふうぞくつうぎ)』(後漢(ごかん)末)には、女媧が人間をつくったという物語がみえ、それによると、彼女は初め黄土を人の形にこねあげて、人間をていねいに1人ずつつくっていた。ところが、作業にほねが折れすぎて休むまもないのに業(ごう)を煮やした女媧は、ついに縄を泥中に浸してそれを引き上げた。そのときに縄から飛び散った泥のしずくがすべて人間になったという。こうした創造神としての伝承はやがて変化し、女媧は三皇の一人となったり、また男性神の伏羲(ふくぎ)と夫婦とも考えられるようになった。しかし上半身は人間だが、下半身が蛇形に描かれた伏羲と女媧が、互いの尾を絡み合わせて並んでいる姿が画像石などに残されており、むしろこうした蛇身の姿こそ本来の女媧に近いものと思われる。
[伊藤清司]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…しかし苗族の立場からいえば,共工こそ天地を傾けた大悪神であった。天が北西に傾き,欠漏が生じたところを,女媧(じよか)が五色の土で補修し,それが輝く星となった。女媧こそ救世の主であるが,この竜形の神にはまた人類初生の説話があり,伏羲(ふくぎ)と相交わる竜形の神である。…
…なんでも望む物をその中から出し福運を得たり,妖怪を退治する〈宝葫蘆〉の呪宝譚,葫蘆やウリ類から生まれる霊童出現譚の昔話も伝わっている。人類の始祖〈伏羲(ふくぎ)・女媧(じよか)〉や各種族が葫蘆中から生まれたとする神話がとくに西南の漢族以下諸民族に普遍的に流布している。伏羲,女媧の名まえは葫蘆そのものの意味であり,葫蘆の化身だという聞一多の説もある。…
※「女媧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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