中国古代の伝説上の帝王。華胥(かしょ)氏の娘が雷沢(らいたく)の中に残されていた巨人の足跡を踏んで懐妊し、生まれたのが伏羲であるという。羲(ふぎ)、庖犧(ほうぎ)とも書き、また太皥(たいこう)ともいわれて三皇五帝の1人に数えられる。『列子(れっし)』では伏羲は人頭蛇身とされ、漢代の画像石には蛇身の伏羲と女媧(じょか)が尾を交えている姿がみられる。易の八卦(はっけ)を考案したり、網を発明して民に狩猟や漁労の方法を教え、さらに獲物を生(なま)のままでなく火を使って料理することも教えたといい、庖犧の名はこれを表していると思われる。そのほか結婚の制度を創始するなど、さまざまな事物の発明や諸制度を創設したといわれるが、これらは諸文物の起源を好んで聖天子の功績に帰そうとする中国古伝承の現れであって、史実とはいえない。民間では、伏羲と女媧が結婚して人類の祖となったという伝承が語られているが、むしろこのような伏羲が本来のおもかげをとどめているものと考えられる。
[伊藤清司]
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…天が北西に傾き,欠漏が生じたところを,女媧(じよか)が五色の土で補修し,それが輝く星となった。女媧こそ救世の主であるが,この竜形の神にはまた人類初生の説話があり,伏羲(ふくぎ)と相交わる竜形の神である。伏羲,女媧にはまた洪水説話がある。…
…なんでも望む物をその中から出し福運を得たり,妖怪を退治する〈宝葫蘆〉の呪宝譚,葫蘆やウリ類から生まれる霊童出現譚の昔話も伝わっている。人類の始祖〈伏羲(ふくぎ)・女媧(じよか)〉や各種族が葫蘆中から生まれたとする神話がとくに西南の漢族以下諸民族に普遍的に流布している。伏羲,女媧の名まえは葫蘆そのものの意味であり,葫蘆の化身だという聞一多の説もある。…
…彼は,医薬を発明し,虫害・鳥獣の害を除去する法を定めたと伝えられる。農耕や医薬,占い,法などを発明した神農(しんのう)や,書契の法を考案し婚姻の礼を定め,漁猟や祭器を教えた伏羲(ふくぎ)なども,中国神話における文化英雄である。ギリシア神話のプロメテウスも,文化英雄の典型である。…
※「伏羲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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