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女性学 じょせいがくwomen's studies

翻訳|women's studies

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

女性学
じょせいがく
women's studies

男性学者主導で「男の視点」で論じられることの多かった学問領域に「女の視点」を意識的に入れ,脱男性中心性,さらには脱欧米中心性を志向した知の組み替えをはかろうとするもの。アメリカにおいて,1960年代後半に起こったウーマン・リブ運動を契機に 1970年頃に誕生した。日本の女性学はアメリカの影響を受けつつも,1970~77年頃の日本独自のウーマン・リブ運動の流れをくみ,国際婦人年 (1975) 以降の婦人行政の変化を背景とするなかで,1978~82年頃創出された。女性学の性格については,女性の女性による女性のための学問とする規定と,男女による男女を含めた人間に関する男女のための研究とする規定をめぐって論争がある。これは運動に対するかかわり方の相違であり,現実には,双方の立場は,より広い女性学とフェミニズム運動という関係における対抗的補足性を有している。最近では伝統的な「男らしさ」「女らしさ」という枠組みを取りはずし,「ジェンダー」という視点からとらえ直す研究も活発になった。 1990年に 251校の大学・短大で女性学関連講座が 436講座設置され,また国立女性教育会館をはじめ各自治体の婦人会館で女性学講座が開かれるなど,近年,高等教育分野・社会教育分野での受講生も増加している。

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デジタル大辞泉の解説

じょせい‐がく〔ヂヨセイ‐〕【女性学】

women's studies》男性の視点から構築された既存の学問を、女性の視点からとらえ直そうとする新しい学問。1970年代に、アメリカの女性解放運動の中から生まれたもの。

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百科事典マイペディアの解説

女性学【じょせいがく】

1960年代以降のウーマン・リブの高まりから生まれた新しい学問。英語ではwomen's studies。女性が主体となり,これまで男性中心に形づくられてきた歴史,社会,文化,法などを問い直し,再考しようとするもの。
→関連項目シスターフッド性差別フェミニズム母性保護論争

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世界大百科事典 第2版の解説

じょせいがく【女性学 women’s studies】

女性に関する研究および講座。1970年に盛り上がった女性解放の運動によって大学に設置された。1960年代の黒人運動および大学紛争において,アメリカでは大学改革の一環として,黒人の地位向上を目ざす黒人学Afro‐American studiesの講座が設置されるようになったが,それに対応している。女性社会学,女性心理学,女性史,女性文学などの種類があり,女性を学問の対象(オブジェクト)とすることによって,あらゆる学問の中に女性の存在をクローズアップさせるばかりでなく,研究主体(サブジェクト)としての女性の眼を重視し従来の学問の偏向をただそうとする。

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大辞林 第三版の解説

じょせいがく【女性学】

性差別意識や男性中心の視点にとらわれた既存の学問のあり方を批判し、女性の視点から問い直す研究。女性解放運動と深い結びつきをもち、学際的性格をもつ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

女性学
じょせいがく
women's studies

女性の視角にたって既成の学問を見直そうとする学問。1960年代後半にアメリカで始まったwomen's studiesの訳語。心理学、社会学、文学、哲学、史学などの人文・社会科学系の学問が、従来、いかに男性の視角で構築された「男性学」であったかを明らかにし、これらの学問領域を女性の視角から再構築することを目ざす。1950~60年代のアメリカにおける一連の異議申立て運動の展開のもとで、公民権運動、民族差別反対運動、大学革命運動と並び、女性解放運動(ウーマン・リブを中心とする第二次フェミニズム運動)が繰り広げられた。女性学は、この女性解放運動の理論的支柱を担う役割を期待されて誕生、女性の視点で歴史をとらえ直し、政治、社会、経済、文化を描き直す研究が展開されるに至った。
 大学における女性学講座の設置は、アメリカのあらゆる女性解放運動グループが参加した1969年の「女性が結集する会議」で提案され、70年にカリフォルニア州立サン・ディエゴ大学で最初の女性学のプログラムが組まれた。以降、短期間に、アメリカの過半の大学のカリキュラムに取り入れられるに至った。日本でも当初、主としてアメリカ帰りの研究者を中心にその紹介がなされ、国際女性学会東京会議の開催(1978)、日本女性学会の設立(1979)以降、諸研究業績の出版などの活動が活発に展開されてきた。
 女性学の設立の基本には、歴史的性差別の認識とともに、その差別を正当化し維持してきた既成の学問、歴史や文明への女性の貢献を無視してきた既成の学問への批判がある。同時に、200年近い歴史をもつ「婦人論」や「婦人問題」もまた男性の視角を中心に、既成の学問の応用、補完、延長線上にその構築が行われたという認識のもとに、批判的検討の対象となった。
 国際婦人年(1975)を契機に、世界的な規模で女性の生き方の問い直しが展開されつつあるが、「婦人論」や「婦人問題」の一定の史的成果と女性学のフレッシュな視角が相まった、世界の、日本の女性の平等と発展のために役だてられる理論の確立こそが求められる。その意味において、1970年代以降、女性学研究発展のプロセスにおいて登場したジェンダー論gender theoryが注目される。従来の学問の多くが生物学的性差一元論のもとで展開されてきたという批判のもと、生物学的・解剖学的性差を意味するセックスと、社会的・文化的に形成された性差を意味するジェンダーを峻別(しゅんべつ)するために提起された視角である。この男女両性の関係性を追究するジェンダー論の誕生は、従来の男女不平等の社会制度を変革し、「婦人問題」の解決を目ざす「婦人論」「婦人運動」と、女性の権利の擁護を掲げる「フェミニズム論」「女性学」「女性解放運動」を、両性の人間的解放という目的に向けて合流させる一つの契機をなすと押さえられる。[布施晶子]
『岩男寿美子・原ひろ子著『女性学ことはじめ』(講談社現代新書) ▽井上輝子著『女性学とその周辺』(1980・勁草書房) ▽女性学研究会編『女性学をつくる』(1981・勁草書房) ▽女性学研究会編『講座女性学』全4巻(1984~87・勁草書房) ▽井上輝子他編『日本のフェミニズム』全7巻・別冊(1994~95・岩波書店) ▽石井三恵著『共に学ぶ女性学――明日を共に生きるために』(1998・泉文堂)』

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