妊婦・妊娠を希望する人(読み)ニンプニンシンヲキボウスルヒト

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版の解説

妊婦の生理と薬


 妊娠中は、薬の体内での変化が高まった状態にあります。薬を使用すると、肝臓や腎臓じんぞうにさらに大きな負担がかかり、障害がおこりやすくなります。その結果、薬の作用時間が長くなり、薬の作用も強まり、副作用も発生しやすくなるのです。


 また、つわりのために、薬の内服ができなくなったり、薬を使用してもその効果が低下します。そして、薬の副作用である胃腸障害がおこりやすくなります。さらに、体重の増加のために、薬の用量をはっきりと決めにくくなります。


 妊娠している人のための特別な薬があるわけではなく、使われるのはふつうの薬です。


 このため医師は、妊婦の母体や胎児への薬の影響を考え、十分に注意をはらって薬を処方しています。


 妊娠している人、あるいは現在妊娠する可能性のある人、妊娠を希望している人は、必ずそのことを医師に伝えてください。


妊娠時の薬の影響と副作用


 薬によっては、妊婦の体に変化をもたらし、その二次的な影響で胎児や新生児に障害を与える場合があります。母体に使用された薬の成分が血液を介して胎児に移行することから、ときに流産や早産、形態異常、新生児障害、胎児死亡などをおこすのです。


 これらの障害を引きおこす可能性がある薬には、次のようなものがあります。


胎児の仮死や死亡をおこす薬剤 モルヒネなどの麻薬、バルビツール酸系の催眠鎮静剤、副腎皮質ふくじんひしつホルモン剤、降圧剤など。


形態異常催奇形性さいきけいせいをおこす薬剤 催眠鎮静剤、抗不安剤、解熱鎮痛剤(アスピリン、スルピリンなど)、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤、合成黄体ホルモン剤、血糖降下剤、抗ガン剤など。


新生児障害をおこす薬剤 抗精神病剤、催眠鎮静剤、抗てんかん剤、パーキンソン病治療剤(塩酸アマンタジン製剤)、合成抗菌剤(サルファ剤)、抗生物質(テトラサイクリン、クロラムフェニコール、アミノグリコシド、ペニシリン剤)、抗リウマチ剤(ペニシラミン製剤)、抗凝血剤(ワルファリンカリウム製剤)、降圧剤、カルシウム拮抗剤きっこうざい黄体おうたいホルモン剤、卵胞ホルモン剤、角化症治療剤(エトレチナート製剤)、ビタミンA剤、ビタミンD剤、ビタミンK剤、男性ホルモン剤、甲状腺こうじょうせんホルモン剤など。


流産早産をおこす薬剤 下剤、キニーネ剤、子宮収縮剤など。


 こうした薬については医師も十分に注意して処方していますが、薬による事故を防ぐためには妊婦本人の自覚も大切です。


妊娠時の薬の正しい使い方


 薬には、多かれ少なかれ副作用があります。決められた量の使用で形態異常が発生する可能性がある薬は、これまでのところたいへん限られていて少数ですが、胎児に影響があるとわかっていても、こうした薬を使用することがあります。


 それは、副作用が発生しても万全な対策が用意されている場合と、その薬を使用しなければ生命にかかわるか、重大な障害を引きおこすことが明らかな場合です。


 薬の添付文書には、〈妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する〉と記載されています。この有益性を医師がどう判断するかは、ひじょうに難しい問題です。


 そこで、妊娠時に薬を用いる場合には、万一の副作用の発生を防止するためにも、次のような注意をしてください。


①病気があるときには、妊娠前に治療しておくこと。また、妊娠を希望しているときも、病気にかからないよう十分に注意し、積極的に予防する。


②薬を使用する前に妊娠の有無を確かめる。とくに、月経不順の人は妊娠しているかどうかを自分では判断しにくいので、日頃からのチェックが必要。


③妊娠初期には、できるだけ薬を使用しないこと。もし病気にかかっても、薬を飲む必要があるかどうかや、使わなければならない場合の使用法については、医師や薬剤師から十分説明を受けるようにする。


④一般薬(大衆薬)を使用する場合も、妊娠前から使用している薬がある場合も、使用してよいか、継続してもよいかどうかを必ず医師と相談する。どちらの場合にしても、使用は短期間にとどめる。


⑤妊娠中に病気にかかった場合は、自分が妊娠していることを必ず医師に伝える。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

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