妓夫(読み)ギュウ

デジタル大辞泉 「妓夫」の意味・読み・例文・類語

ぎゅう〔ギフ〕【×夫】

客引き護衛をしながら夜鷹などについて歩く男。また、遊女屋で客引きをする若い男。妓夫太郎
「―が夜鷹を大勢連れて来ていて」〈鴎外ヰタ‐セクスアリス
[補説]「牛」とも書く。

ぎ‐ふ【×妓夫】

ぎゅう(妓夫)

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改訂新版 世界大百科事典 「妓夫」の意味・わかりやすい解説

妓夫 (ぎゅう)

遊女屋で事務・客を扱う男子従業員。若い者または牛太郎(ぎゆうたろう)ともいう。語源には諸説あるが確定しがたい。吉原散茶女郎が流入したときにふろ屋の構造をとり入れ,及台(ぎゆうだい)と呼ぶ3尺角ほどの腰掛けを設け,それに客引きを待機させたことと関係があるらしい。事務や経理の支配人格のもの(番頭・見世番),客の呼込み,勘定徴収寝具始末,掃除と飲食物の世話などに分業された。職種に応じ,給料は定額制や歩合制,無給で祝儀のみなどがあり,同店の女性との私通は厳禁され,寄子(よりこ)として所属の親方の支配下におかれた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「妓夫」の意味・わかりやすい解説

妓夫
ぎゅう

遊女屋の男子使用人。牛太郎(ぎゅうたろう)ともいう。1668年(寛文8)、風呂屋(ふろや)女が吉原に移されて散茶見世(さんちゃみせ)ができたとき、その店頭にギュウ台が設けられたのが、妓夫の名のおこりというが確証はない。大きい遊女屋では妓夫の仕事も分業となり、総監督を務める見世番のほか、客引きの立ち番、遊興費の徴収と記帳をする仲働き、飲食物の運搬や掃除をする追回し、書類をつくる書記、寝具を扱う床番などに分かれる。幕末には若い者とよんだが、明治以後、妓夫という文字とともに一般的となった。彼らは各所属組合の寄子(よりこ)で、特定の紹介業者が斡旋(あっせん)した。

[原島陽一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「妓夫」の意味・わかりやすい解説

妓夫
ぎゅう

遊里で客を引く男。遣手婆について,二階の駆引き,客の応待などもした。私娼や夜鷹についている場合もある。「牛」または「牛太郎」ともいい,「妓有」とも書くが,「妓夫」の字をあてたのは明治以降のことであるといわれる。この言葉の源は,承応の頃 (1652~55) ,江戸,葺屋町の「泉風呂」で遊女を引回し,客を扱っていた久助という男にあり,『洞房語園』によると,その男の煙草 (たばこ) を吸うさまが「及 (きゅう) 」の字に似ていたので,人々が彼をして「きゅう」というようになり,それがいつしか「ぎゅう」となり,やがて,かかる男たちの惣名になった,とある。

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普及版 字通 「妓夫」の読み・字形・画数・意味

【妓夫】ぎふ

客引き。

字通「妓」の項目を見る

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