家庭医学館 「子どもの肺炎」の解説
こどものはいえん【子どもの肺炎 Pneumonia of the Child】
息を吸って、空気がのどから気管を通り最後にたどりつくのが、肺の大部分をしめ、呼吸の中心的なはたらきをする肺胞(はいほう)です。その肺胞におこる炎症が肺炎です。
X線写真をとると、本来なら空気が入っていてX線をよく通すはずの肺胞に膿(うみ)がたまり、通りにくくなるため、白く写ります。
ほかに間質性肺炎(かんしつせいはいえん)といって、肺胞の中よりも、おもに肺胞の外側の壁の周辺に炎症がおこる肺炎もあります。
[原因]
ウイルスの感染、細菌の感染、そのほかの微生物の感染に分けられます。
ウイルスでは、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルスなどの感染が多く、細菌では、肺炎双球菌(はいえんそうきゅうきん)、レンサ球菌(きゅうきん)、ブドウ球菌(きゅうきん)、インフルエンザ桿菌(かんきん)、マイコプラズマ菌などの感染があります。
新生児や乳児では、吸引性肺炎(きゅういんせいはいえん)(出産予定日前の早期破水(そうきはすい)などで、汚染された羊水(ようすい)を新生児が肺に吸いこんで発病)、サイトメガロウイルス肺炎、クラミジア肺炎(性病の一種でもあるクラミジア感染症が、親から子にうつって発病)など、ふつうの肺炎とはちがったものがあります。
そのほか、化学物質や関節リウマチ(「関節リウマチ」)などの膠原病(こうげんびょう)で肺炎がおこることがありますが、まれです。1歳以下では、病気の進行が速く、急速に呼吸が苦しくなることがよくみられます。
また肺炎が進んで、二重の肋膜(ろくまく)(胸膜(きょうまく))の間に膿がたまったり(膿胸(のうきょう))、空気がたまったり(気胸(ききょう))、肺胞が破れてくっつき、風船のようなものになりやすいのが特徴です。
[症状]
ほとんどの肺炎に、せき、発熱がみられます。そのうち、呼吸が速くなり、呼吸困難になると、鼻の穴が息を吸いこむときに大きくなる(鼻翼呼吸(びよくこきゅう))とか、肋骨の間やおなかと胸の境がへこむ(陥没呼吸(かんぼつこきゅう))といった状態になります。
重症になると、顔色が悪く(チアノーゼ)なります。いつもの呼吸ではなく、うなるような呼吸をする場合もあります。不機嫌になって、食欲も落ち、せきで吐(は)いたりします。
新生児では、肺炎に共通するせきや発熱という症状なしに、急に呼吸困難が現われることがありますので、注意が必要です。呼吸が速く、ぐったりして、お乳も飲めないようだと、せきや熱がなくても、肺炎のことがあります。早急に受診しなければなりません。
クラミジアという微生物の感染でおこるクラミジア肺炎は、熱があまりでず、強いせきと呼吸困難だけの場合が多いものです。比較的に元気なため、親が気づかず、健診で発見される場合もあるくらいです。
マイコプラズマという微生物の感染でおこるマイコプラズマ肺炎は、夜だけ高い熱が出たり、微熱だけの場合もあります。元気で、食欲もあれば、とくに急ぐ必要もありませんが、熱が4~5日も続くようなら、一度受診したほうがよいでしょう。
[検査と診断]
聴診器で聞きますと、プツプツという音(湿性(しっせい)ラ音(おん))がしたり、呼吸音が聞こえなくなったり、気管支を通る空気の音が聞こえたりします。
肺炎の初期や間質性肺炎では、これらの特徴がみられないことが多く、医者からかぜといわれても、元気がなければ翌日も受診することが必要です。
診断はX線検査でつけます。そのほか、炎症の強さをみる血液の検査(白血球数、血沈(けっちん)、CRPなど)、たんなどの培養検査(細菌の種類をみきわめ、どんな抗生物質が効くか調べる)、抗体検査(ウイルス、マイコプラズマ、クラミジアなどを抗原とする、抗体というものが血液中にあるかどうか調べて、間接的にそれらの病原体を突きとめる)などが、おもな検査です。
[治療]
呼吸困難に対しては酸素補給、からだの水分・栄養分を補給するためには点滴による輸液、細菌の感染が原因なら抗生物質の使用が治療の中心です。
膿胸や気胸をおこせば、チューブを入れて膿や空気を抜くことなど、合併症に応じた処置が必要です。
大きな子どもで、とくに病気のなかった子どもなら、ほとんど治りますが、乳児、とくに3か月までの乳児は、死亡する場合もあります。