孝子峠(読み)きようしとうげ

日本歴史地名大系 「孝子峠」の解説

孝子峠
きようしとうげ

和泉山脈西端部、岬町と和歌山市の境界にある峠。標高は約一〇六メートル。この辺は葛城修験道の行場に組込まれていたようで「諸山縁起」の「転法輪山」の宿の次第に「孝子の多輪」「南北に報恩の沢の水あり。只不思議を示す。如法経あり。口伝あり」とみえ、この孝子の多輪が当峠辺りをさすのではないかと考えられている。また、古くから当峠を通り和泉国と紀伊国を結ぶ道があった。俗に「孝子越」などとよばれた。「続日本紀」天平神護元年(七六五)一〇月二五日・同二六日条に、称徳天皇は紀伊玉津島たまつしま(現和歌山市)行幸帰途海部あまきし(現同上)の行宮から和泉国日根郡深日ふけの行宮に至ったとあり、この行程は当峠を越える孝子峠越であったとみられている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「孝子峠」の意味・わかりやすい解説

孝子峠
きょうしとうげ

大阪府南西端岬町と和歌山市の境にある峠。標高 106m。和泉山脈西端を越える紀州街道 (国道 26号線) 上に位置。大阪と和歌山を結ぶ主要な峠の一つで,大阪側からは繊維,機械類,和歌山側からは石油,ミカンなどのトラック輸送量が多い。峠の下を南海電気鉄道本線がトンネルで通る。峠の名称は,役小角 (えんのおづぬ) の孝子伝説によるとも,橘逸勢 (はやなり) の娘あやめの孝子伝説によるとも伝えられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「孝子峠」の意味・わかりやすい解説

孝子峠
きょうしとうげ

大阪府と和歌山県との境、和泉(いずみ)山脈の西端近くにある峠。標高106メートル。近世には大坂―和歌山間の最短路にあたる孝子越(ごえ)紀州街道の峠として往来が盛んであった。1898年(明治31)現南海電気鉄道本線が峠下にトンネルで通じて一時衰退したが、近年国道26号として自動車交通が盛んである。孝子の地名は『文徳(もんとく)実録』にある平安初期の書聖橘逸勢(たちばなのはやなり)の娘あやめの故事による。峠の約2キロメートル北に橘父子の墓がある。

前田 昇]

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