気象庁の行う気象予報の一つ。長期予報ともいう。各季節の天候の予報は古くから行われてきたが、十分な精度をもつには至らなかった。しかし1996年(平成8)から気象庁において、将来の気候の状態を予測するのに、大気の変動を記述する流体力学や熱力学の方程式を、スーパーコンピュータを用いた数値計算によって解く力学的手法(数値予報)が導入され、季節予報は新しい発展の道を歩み始めた。
季節予報の種類には1か月予報、3か月予報、暖候期予報、寒候期予報があり、全国を対象とする全般季節予報と各地方を対象とする地方季節予報がある。全般季節予報は気象庁本庁が、また地方季節予報は全国を11に分けた予報区ごとにそれぞれを担当する気象官署(管区気象台等)が発表する。
1か月予報(毎週金曜日発表)は、発表日の翌日から向こう1か月間に出現する可能性が大きい天候と気温、降水量、日照時間について「低い(少ない)」「平年並み」「高い(多い)」の階級に分け、それぞれの階級が現れる確率を数値で示す。さらに気温については週を単位として、1週目と2週目、3~4週目の各階級の確率を予報する。
3か月予報(毎月25日ごろ発表)は翌月から3か月に出現する可能性が大きい天候と気温、降水量について1か月予報と同様に3階級の確率を予報する。さらに各月の気温、降水量の各階級の出現確率を予報する。
暖・寒候期予報(それぞれ毎年2月と9月に3か月予報と同時発表)は、暖候期予報が夏の6月から8月まで、寒候期予報が冬の12月から翌年2月までの大まかな天候の傾向と、夏や冬の平均気温、合計降水量の各階級の出現確率を予報する。
暖候期予報では梅雨時期の合計降水量について、冬季の日本海側の地方では1か月予報、3か月予報、寒候期予報においては、それぞれの期間の合計降雪量について、各階級の出現確率を予報する。
季節予報では前記の数値予報の手法で行われており、複数(50例程度)の数値予報の結果を統計的に処理するアンサンブル予報が用いられている。また3か月予報や暖・寒候期予報では、大気と海洋の熱のやりとりなどの相互作用を組み入れて、大気と海洋の将来を一体的に予報する大気海洋結合モデルが2010年(平成22)に導入された。さらに、太平洋の赤道域で発生するエルニーニョやラニーニャ、太平洋西部やインド洋の熱帯域の海面水温の変動、寒気の南下を左右する北極振動などと異常気象との関係の分析や、季節予報への利用方法の開発が進められている。
[倉嶋 厚・青木 孝]
『気象庁編『気象業務はいま』各年版(富士マイクロ。2000年まで書名『今日の気象業務』、2002年まで財務省印刷局発行)』▽『古川武彦・酒井重典著『アンサンブル予報――新しい中・長期予報と利用法』(2004・東京堂出版)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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