日本大百科全書(ニッポニカ) 「学校開放」の意味・わかりやすい解説
学校開放
がっこうかいほう
school extension
在籍する学生・生徒に限らず、一般市民に対し広く学校の施設や教育の機会を開放すること。19世紀後半にイギリスで始まった大学開放(大学拡張)は、大学が地方に出かけて講義を行うもので、以後地方都市に新しい大学を生み出すきっかけになったものである。以来、各大学で一般成人を対象とした講座・学級が開かれ、1920年代以後、構外教育部を設けて成人教育専任の教員を配置する大学が増えてくる。アメリカや北欧諸国、さらにイギリスの影響下にある国々でも、公開講座・文化的催しの開催、授業聴講許可、資料刊行、通信教育、放送などによって、一般成人に、教養上または専門技術習得上の高度な学習の機会を提供するようになる。イギリスや北欧諸国では、労働者教育運動との結び付きが強く、アメリカでは、19世紀以来の農業改良普及事業とのかかわりがみられる。フランスでは、68年から国立大学に大学開放を義務づけている。公立初等・中等学校が成人の学習機会を提供している国も多い。
日本では、早稲田(わせだ)大学が明治期から通信教育や巡回講話会に取り組んでいるが、国の取組みとしては、1919年(大正8)に文部省の直轄学校で開くようになった公開講座が始まりである。第二次世界大戦後は、民主主義の普及や生活改善のため、小・中学校で社会学級、高等学校や大学で文化講座や専門講座が開かれた。その後、産業構造の変化などもあって、いっそうの学校開放が求められ、国立大学でも大学教育開放センターや生涯学習教育研究センターなどの設置が進み、私立大学でもエクステンションセンターなどを設けて、オープンカレッジなど公開講座を開くところが多くなっている。また、小・中学校の校庭・体育館・教室などの住民への開放も進み、高等学校で公開講座を設けるところも増えている。
[上杉孝實]
『田中征男著『大学拡張運動の歴史的研究』(1978・野間教育研究所)』▽『平沢茂編著『学校教育と社会教育の間――生涯学習体系の創造』(1990・ぎょうせい)』▽『文部省編『学校開放のための施設・環境づくり』(1995・文教施設協会)』▽『日本社会教育学会編『高等教育と生涯学習』(1998・東洋館出版社)』▽『日本教育経営学会編『シリーズ教育の経営4 生涯学習社会における教育経営』(2000・玉川大学出版部)』