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宇宙線嵐 うちゅうせんあらしcosmic rays storm

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

宇宙線嵐
うちゅうせんあらし
cosmic rays storm

宇宙線の強度が大きな磁気嵐の際に数%減少する現象のこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

宇宙線嵐
うちゅうせんあらし

主として磁気嵐の発生時にみられる、銀河系起源の宇宙線強度が減少する現象。全地球的現象であることを発見した人にちなみフォーブシュ減少ともいう。数時間で通常の宇宙線強度の数%から数十%減少し、数日かけて指数関数的に回復する。経過は同じだが高緯度で減少量が大きい。宇宙線嵐と磁気嵐の源は、同じ太陽コロナ爆発現象(CME)にある。CMEが発生すると、平均秒速約300キロメートルで吹いている太陽風が秒速約1000キロメートルもの高速になり、その密度や温度も増加する。太陽風がコロナから持ち出してきた強くかつ乱れた磁場によって宇宙線が遮蔽(しゃへい)され、地球磁気圏よりもはるかに広い空間を占めるCME現象の内部で宇宙線強度が減少する。一方、磁気嵐は地球磁気圏の現象であり、これが宇宙線嵐と磁気嵐の時間的経過がかならずしも並行せず、量的にも比例しない理由である。CMEの前面には衝撃波が発生し、衝撃波で反射された宇宙線の影響で、宇宙線減少の前に逆に増加が観測されることもある。宇宙線にはこのほか、1日周期で繰り返す日変化現象がある。これは宇宙線が、わずかではあるが一方向に流れているためである。宇宙線嵐に際して、宇宙線強度の空間分布が変化しその流れが強化されるため、日変化振幅の増大が認められる。通常でも地球磁場(地磁気)は宇宙線の侵入を一部さえぎっているが、磁気嵐の際にはその磁場が弱まるので宇宙線の強度増加がみられる。しかし大きな減少に隠されて見逃されやすい。
 数日間という短期的な宇宙線嵐に対し、宇宙線強度には太陽活動度を反映して11年周期の変化がある。太陽活動度は、黒点や磁場の変化でみることができる。太陽活動度が大きい時期にCMEなど太陽系空間擾乱(じょうらん)の発生頻度が増し、宇宙線強度は減少を示す。太陽風は太陽から100天文単位(AU=太陽地球間距離)弱の周期に太陽系外の空間に対して衝撃波の壁をつくる。深宇宙探査機による観測から、壁内の宇宙線強度分布が得られている。太陽風が太陽から壁に達するのに約1年かかることと関連して、太陽活動変化に対し宇宙線強度変化は約1年遅れる。太陽磁場の向きは11年ごとに反転する。これも宇宙線強度分布に反映し、わずかではあるが地球でも検出される。
 また、宇宙線嵐の数日前に、宇宙線強度の急激な増加をみることがある。CMEに伴い太陽表面でおこる陽子や電子などの荷電粒子の加速が原因であり、強い太陽フレアに伴って観測されることが多い(太陽プロトン現象)。これは宇宙線の一部が星で発生する証拠となっている。銀河系起源の宇宙線よりエネルギーはやや低いが、これらの荷電粒子は光に近い速度で運動するため、フレア発生直後の1時間以内に強度の変化が検出される。通常の宇宙線強度の数倍になることもあり、高緯度ではるかに大きい。この変化は高高度飛行や宇宙空間での放射線障害を引き起こすとして警戒されている。また、非常に強い太陽フレアに伴って中性子が地上で観測されることがあり、太陽表面でも核反応がおこっていることを示している。[和田雅美]
『武谷三男著『宇宙線研究』(1970・岩波書店) ▽早川幸男著『宇宙線 自然探求の歩み』(1972・筑摩書房) ▽長谷川博一著『宇宙線の謎 発生から消滅までの驚異を追う』(1979・講談社) ▽小田稔ほか編『宇宙線物理学』(1983・朝倉書店) ▽小田稔著『宇宙線』(1984・裳華房) ▽桜井邦朋著『宇宙線はどこで生まれたか』(1985・共立出版) ▽T・K・ガイサー著、小早川惠三訳『素粒子と宇宙物理』(1997・丸善) ▽朝永振一郎著『宇宙線の話』(岩波新書) ▽佐藤文隆著『宇宙物理への道 宇宙線・ブラックホール・ビッグバン』(岩波ジュニア新書)』

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