安積疎水(読み)アサカソスイ

デジタル大辞泉 「安積疎水」の意味・読み・例文・類語

あさか‐そすい【安積疎水】

福島県郡山盆地灌漑かんがいするための用水路。明治15年(1882)通水。新水路は昭和26年(1951)完成。ともに猪苗代いなわしろから取水し、阿武隈あぶくまに注ぐ。

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精選版 日本国語大辞典 「安積疎水」の意味・読み・例文・類語

あさか‐そすい【安積疎水】

  1. 福島県猪苗代湖から郡山市西方に引かれた農業用水路。明治一五年(一八八二)完成。広義には、昭和二六年(一九五一)通水の額取山の東裾を潤す新安積疎水も含めていう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「安積疎水」の意味・わかりやすい解説

安積疎水
あさかそすい

福島県郡山市(こおりやまし)付近を灌漑(かんがい)する用水路。猪苗代湖(いなわしろこ)の水を引く。近年は新安積疎水を加え、さらに五百川(ごひゃくがわ)筋の水利組合を合併し、これらの水路全部を安積疎水とよぶようになった。安積疎水は3年間の工事ののち1882年(明治15)10月通水。第二次世界大戦後さらに開田を進めるため新安積疎水開設の工事に着手、1965年(昭和40)完成した。灌漑面積1万4000ヘクタール。郡山、須賀川(すかがわ)、本宮(もとみや)の3市などにまたがり、組合員は約1万人に達する。猪苗代湖の水の利用は、安積地方の干害を除くために、明治の初め地元の小林久敬(こばやしきゅうけい)(1821―1892)らがかねて画策していた。開成山の開拓を進めた県官中条政恒(ちゅうじょうまさつね)(1841―1900)もその計画を重視し、政府に建白書を出した。安積の諸原野が士族授産のための開墾適地と認められ、入植者も迎えて、ようやく通水計画は具体化した。オランダ人ファンドールン設計により、1879年(明治12)着工。猪苗代湖の排水口である戸ノ口に十六橋水門を設けて水位を調節し、上戸(じょうこ)で取水して五百川の上流に流し、磐梯熱海(ばんだいあたみ)温泉付近でまた取水して対面原(たいめんぱら)その他を灌漑する。五百川筋の落差を利用して、沼上(ぬまかみ)、竹ノ内、丸守では発電も行う。この用水を得て安積の古田は干害を免れ、開墾地では新田面積が増加した。取水量は最初、毎秒5.57立方メートル、新安積疎水の完成で11.3立方メートルとなった。この増量のため上戸の取水口は新しく付け替えられた。灌漑用ばかりでなく、郡山市民の飲料水、工業用水も供給する。沼上などの発電は郡山市の工業の発達に役だち、また開墾の進行で人口増加をみるなど、安積疎水は郡山の発展に大きく貢献している。1997年(平成9)より老朽化した用水路の改修を行う「新安積農業水利事業」が開始され、2008年(平成20)に完了した。

[安田初雄]


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改訂新版 世界大百科事典 「安積疎水」の意味・わかりやすい解説

安積疎(疏)水 (あさかそすい)

福島県の中央部にある猪苗代湖の水を引いて,奥羽山脈の東部にある郡山盆地の水田を灌漑する用水路。構想は幕末のころよりあったが,1873年(明治6)に郡山の有志によって結成された開成社の大槻原開拓の成功をきっかけとして,明治政府は国家事業として郡山盆地の台地に士族の入植と疎水の開削を計画した。78年オランダ人の技師ファン・ドールンC.J.van Doorn(1837-1906)に設計させ,79年起工,延べ85万人を動員して82年に完成した。疎水路は猪苗代湖東岸山潟地区に取入口を設け,奥羽山脈を沼上トンネルで貫通し,五百川上流に自然流下させ,熱海地区で再び水路に導き,郡山盆地の西縁を南下し,盆地南部の牛庭原東部に至る52kmの幹線と7分水路よりなる。また疎水工事と並行して,九州の久留米ほか全国各地から旧藩士が入植し,盆地の各台地面の開墾が進められ,新たに約2000haの水田が開かれ,明治末年には開墾田2300ha,灌漑面積は5300haとなった。郡山盆地の西部と岩瀬地方の北西部を灌漑する新安積疎水は1943年から着工されたが,途中計画変更などがあり,51年に通水できた。68年に合併した五百川用水を加えると,安積疎水の灌漑面積は1万1000ha,総通水量は毎秒約16m3である。なお疎水の水は1899年運転開始の沼上および竹内,丸森各発電所や,郡山市の水道,工業用水にも利用され,大正期以降郡山の紡績工業を発展させた。
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百科事典マイペディア 「安積疎水」の意味・わかりやすい解説

安積疎(疏)水【あさかそすい】

福島県郡山盆地一帯に引かれた灌漑(かんがい)用水路。洪積台地のため阿武隈川の水を利用できず,明治初年オランダ人ドールンの設計により猪苗代湖の水を引き開削,1882年完成。1951年主として須賀川盆地北西部を灌漑する新安積疎水が完成,新旧両疎水で約9000haを潤す。
→関連項目郡山[市]須賀川[市]疎(疏)水

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世界大百科事典(旧版)内の安積疎水の言及

【福島[県]】より

…米作は会津地方の会津盆地,猪苗代盆地,中通りの郡山盆地,須賀川盆地や,浜通り北部の沿岸低地で盛んであるが,なかでも県下最大の会津盆地は,中世以来開拓された水田が集中しており,水稲10a当り収量が600kg近くの地区もあって,県内一の米どころである。また明治初年まで水利のよくなかった郡山盆地では,猪苗代湖から水を引く安積(あさか)疎水が1882年完成して水田面積が増大し,大正期以降の郡山市の紡績業の発展にも貢献した。野菜類では,須賀川市付近を中心として昭和40年代から盛んになったキュウリ(全国2位,1995,以下同)をはじめ,トマトやネギなどの生産が多い。…

※「安積疎水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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