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大義名分 タイギメイブン

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デジタル大辞泉の解説

たいぎ‐めいぶん【大義名分】

人として、また臣として守るべき道義と節度。「大義名分にもとる」
行動のよりどころとなる道理。また、事を起こすにあたっての根拠。「大義名分が立つ」

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世界大百科事典 第2版の解説

たいぎめいぶん【大義名分】

江戸時代の水戸学的な思想の場でつくられた概念。しかし,この合成語が普及したのは近代で,江戸期にはさほど使われてはおらず,水戸学の文献には,必要に応じて諸概念がばらばらに用いられるのが散見できるのみである。〈大義〉は大きな正義の意,〈名分〉は君臣の名と上下の分の意で,合わせて君臣関係を名として保持するところに階層秩序の備わる正義の場があるとする考え方が,この言葉で指示されていることになる。義は礼楽に属するとした徂徠学の見解が水戸学の基底にあったことを勘案すれば,大義とは秩序が実現しうる究極の制度を意味する。

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大辞林 第三版の解説

たいぎめいぶん【大義名分】

人として、また臣民として守るべきことがら。 「 -にかなう」 「 -を通す」
何か事をするにあたっての根拠。やましくない口実。 「 -が立つ」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

大義名分
たいぎめいぶん

大義とは、君臣の大義、すなわち臣下の君主に対する忠誠の義務を、人の道義のなかでも重要なものとみる意味を表現した語で、それが父子の間の親愛の情よりも優先させられた場合には、「大義、親を滅す」(『春秋左氏伝』隠公(いんこう)四年の条)と記述された。しかし中国では、君臣よりも父子の関係のほうが人倫の基本とみなされていたから、前記のような事態はむしろ例外的なものであった。名分とは、社会的地位(名)に対応する役割の区別(分)を意味する語で、中国の古代には、法家や道家の文献にはみえるが、儒家の古典のなかでは用いられていない。それが儒学者の用語となったのは、北宋(ほくそう)の司馬光(しばこう)が、その著『資治通鑑(しじつがん)』の冒頭で、君主が社会の秩序を維持するためには、名分を尊重する必要がある、との趣旨を述べて以後のことであろう。南宋の朱熹(しゅき)(朱子)は、司馬光の歴史観を批判する立場から、『資治通鑑綱目』を編纂(へんさん)したが、そのなかでも、またそれ以外の著述のなかでも、名分の語はほとんど用いなかった。朱熹の学問、すなわち朱子学では、道徳的行為の正しさを判定する基準を、個人の心の内面的な動機のあり方に置き、名分というような形式的・外面的なものを基準とはしなかったから、それが当然である。したがってまた、「大義名分」という熟語も、中国では用いられなかったようである。
 ところが江戸時代の日本では、朱子学が普及するとともに、朱子学の合理主義的な側面を代表する「窮理」の説よりも、直覚的な修養を教える「居敬(きょけい)」の説に重点を置き、与えられた秩序に随順する個人の純一な心情を、その「敬」の観念で表象することにより、朱子学を理解しようとする傾向が現れてきた。それを代表するのが山崎闇斎(あんさい)の学派で、この派では、秩序への随順を教えるために、「大義」や「名分」の観念を強調し、その影響により、これらの観念が朱子学の特色をなすものと一般に考えられるようになった。闇斎の門人である浅見絅斎(あさみけいさい)の著『靖献遺言(せいけんいげん)』(元禄一=1688)は、その意味での「大義」や「名分」の重要性を中国史上の事実に即して解説したものとして有名である。
 その『靖献遺言』などの影響のもとに、やがて幕末期になると、外国に対する日本人の国民としての自覚や、その国家の君主としての天皇に対する忠誠の義務などが、「大義名分」という熟語で表現されるようになり、それが政治運動を支える一種の理念として、明治維新に至る統一国家形成の動きを推進する役割を果たした。この時期における「大義名分」の語は、政治的行動を正当化するものとしての「正義」の観念と、ほとんど同一の意味を表象していたと考えられる。そのことの結果と思われるが、現代の日本では、「大義名分」の語は、かならずしも政治的行動とは関係がなく、また社会秩序についての特定の観念とも無関係に、ある行為が正当であることの論拠、ないしその正当性の標識、といった意味で、一般に用いられている。[尾藤正英]

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