ほうろう(英語表記)porcelain enamel

翻訳|porcelain enamel

精選版 日本国語大辞典 「ほうろう」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ろう【培・部婁】

〘名〙 (「ほう」は「培」「部」の漢音) 小さな丘。また、小さな家。
性霊集‐四(835頃)進雑文表「夫、尺水本無万里之鯤、培何有千丈之幹」 〔春秋左伝‐襄公二四年〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ほうろう」の意味・わかりやすい解説

ほうろう
ほうろう / 琺瑯
porcelain enamel

鉄、銅、銀、アルミニウム、金などの金属の表面を薄くガラスで覆ったもの。高温でフリットガラス質粉末)を焼き付けてつくる。ほうろう鉄器がもっとも多く、古くからさびを防ぐ目的で生活用具に使われてきたが、現在では大型の浴槽、反応容器などにも使われ、またアルミニウムほうろうも用途を広げている。銅、銀、金は美術工芸品に利用され、勲章七宝(しっぽう)などはその代表的な例である。

 ほうろうの起源は古く、出土品からみると紀元前4世紀にエジプトで金や銀に用いられ、また鉄ほうろうはヨーロッパで1800年には始まっている。このほか、鉄パイプの中でガラス管を加熱、軟化させて内面に融着したガラスライニングパイプや、フリットを焼き付けてからガラスセラミックス(結晶化ガラス)にして強度を高めたものなどがある。ともに化学工業方面に使われるが、後者はとくに強度の点で優れている。

 鉄ほうろうを例にとると、油などの除去を兼ねて加熱後、サンドブラストや酸洗いで表面を清浄にしてから下がけフリットのスリップ(鉱物粉末の濃厚な懸濁液)を吹き付け、乾燥して焼成し、同じ手順で上がけフリットをその上に焼き付けて完成する。スリップ中にはフリットの沈降を防ぐため少量の解膠(かいこう)剤を加える。ほうろうによっては1回の焼成で完成するものも開発されている。

 ほうろうはガラス質なので、水、薬品に強く耐熱性もあって衛生的にも優れているため、品質向上とともにふたたび用途を広げている。しかし、機械的および熱的衝撃には弱いので注意を要する。

[境野照雄]


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普及版 字通 「ほうろう」の読み・字形・画数・意味

【培】ほうろう

小丘。唐・柳宗元〔始めて西山を得て宴游する記〕(まと)ひ白を繚(めぐ)らし、外、天と際し、四一の如し。然る後是の山の特立して、培を爲さざるを知るなり。

字通「培」の項目を見る

朗】ほうろう

轟。

字通「」の項目を見る

】ほうろう

小さなかめ。

字通「」の項目を見る

琅】ほうろう

大きな声。

字通「」の項目を見る

【磅】ほうろう

鼓の高くひびく音。

字通「磅」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ほうろう」の意味・わかりやすい解説

ほうろう
porcelain enamel

金属の上からガラス質の被膜をコーティングしたもので,金属の強さと,ガラスの耐食性,清潔さとをあわせそなえたもの。家庭用容器をはじめ調理台,洗濯機,冷蔵庫,あるいは化学工業用容器など用途は広い。基材の金属は鉄や鋼が大部分で,鉄器がほうろう製品を代表し,一般にほうろう鉄器といわれる。ほかに金,銀,銅や鋳鉄,アルミニウムなどが使われる。釉は,金属基材に直接密着する下掛けぐすり (コバルト,ニッケル,マンガン,モリブデンなどの酸化物) と,その上に施して装飾性と耐食性を与える上掛けぐすりから成り,さらに着色,色模様をつけるために色掛けぐすりをかける。こうした釉を,表面をきれいにした金属基材にかけ焼成する。焼成温度は,下掛けぐすり 870~920℃,上掛けぐすり 800~850℃程度である。耐食性を強化したほうろうに,耐酸ほうろう,グラスライニングなどがあり,耐熱性を特によくしたものに,耐熱ほうろうやセラミックコーティングなどがある。

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化学辞典 第2版 「ほうろう」の解説

ほうろう
ホウロウ
enamel

粉末状の酸化物を金属表面に焼き付け,光沢のあるうわぐすり状にしたものの総称.酸化物にはB2O3,Al2O3,SiO2,PbO,アルカリ金属,およびアルカリ土類金属酸化物などが用いられる.基材の金属には,主として軟鉄,鋳鉄,アルミニウムなどを使う.銅,銀などは七宝,工業用の内張りの場合にはガラスライニングとよぶ.金属に焼き付ける温度はガラスの流動温度程度であるから,金属の耐熱性に従ってガラス組成を選ばなければならない.ほうろうの接着強度を高めるなどの目的から金属表面にニッケル処理したり,サンドブラストをかけたり,薄い下掛け用のほうろうをあらかじめかけたりする.

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