中国の宋代(960~1279)に出版された図書。宋板、宋本、宋刊本、宋槧(そうざん)本ともいう。当時の出版は木版印刷であった。中国における出版は宋代から盛んに行われるようになったので、宋版は多くの古典のもっとも古い出版物であり、もっとも古い本文を伝えている。また、宋版は文字が雄勁(ゆうけい)で美しく、版木彫刻の技術が精巧であり、文字の校正は厳密で誤字が少なく、用紙も優れている。宋版は以上の諸理由に加えて希少価値も高いので、学術研究資料として尊重され、また鑑賞の対象として愛蔵されている。宋版の内容は経書、史書、医書、詩文集等が多く、大蔵経もしばしば出版された。宋版は中央・地方の官庁、個人の学者や官吏等によって出版されたほか、書店の営利出版も盛んに行われた。宋代に出版事業が盛んであったのは四川(しせん)、浙江(せっこう)、福建地方であった。現存する宋版の大部分は南宋時代の刊本で、北宋版はまれである。宋版の版木が元・明(みん)時代まで官庁に保存され、印刷された例もある。宋版に多い欧陽詢(おうようじゅん)風の字体は宋朝体活字とよばれており、現代の印刷にも用いられている。宋版は平安・鎌倉時代以後、留学僧や商船によってわが国に伝来し、寺院、大名、富豪、学者などによって収集、保存された。
[福井 保]
『長澤規矩也著『書誌学序説』(1968・吉川弘文館)』▽『長澤規矩也著『図解和漢印刷史』(1976・汲古書院)』▽『『和漢書の印刷とその歴史』(『長澤規矩也著作集 巻二』所収・1982・汲古書院)』▽『『宋元版の研究』(『長澤規矩也著作集 巻三』所収・1983・汲古書院)』
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…印刷・出版は国子監(国立大学)で行い,ここで彼は,ほかにもいくつかの大出版を行った。
[宋版]
宋代は商工業,貿易の発展を背景として,文化がおおいに興った時代である。唐代以来の木版印刷術の発達も宋代で完成され,印刷・出版事業は国を挙げて盛んになった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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