中国の元代(1271~1368)に出版された図書。元刊本、元槧(げんざん)本ともいう。元版は中国の古版本のなかでは宋版(そうはん)に次いで古く、現存する本も少ない。また、宋版の影響を受けているので、宋版とよく似ていて、識別しがたいものもある。そのため、一般に「宋元版」と併称され、学術研究資料として同じように尊重されている。元代には中央、地方の官庁や学校から、経書、史書など大部な図書が多く出版された。書店の営利出版は宋代に引き続いて福建地方でもっとも盛んに行われた。同地の元版には元の趙孟頫(ちょうもうふ)の筆法による、いわゆる趙松雪体の文字を用いたものが多く、それは後の明版(みんぱん)にも影響を与えている。
元版の図書はただちに鎌倉時代のわが国に輸入され、京都、鎌倉の両五山を中心とする中世の禅宗寺院において、これを忠実に覆刻して出版したものが多い。元版は宮内庁書陵部、国立公文書館、静嘉堂(せいかどう)文庫、東洋文庫などにもっとも多く所蔵されている。
[福井 保]
『『宋元版の研究』(『長澤規矩也著作集3』所収・1983・汲古書院)』
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