いくつかの波の重ね合わせにより、全体が一つの振動数、同じ位相で調子をあわせて振動する場合、これを定常波または定在波という。入射波と反射波のように、同じ振動数と同じ偏り(媒質の変位の方向)をもち、進行方向は逆向きの二つの正弦波の重ね合わせがおこると、媒質は単振動をし、その振幅が最大になる場所と最小になる場所、すなわち腹(はら)と節(ふし)とが交互に等間隔に現れる。腹と腹、節と節との間の最短距離は波の波長の半分に等しい。位置x、時刻tにおける媒質の変位u(x,t)は、二つの波の変位u1とu2の和として
u(x,t)=u1(x,t)+u2(x,t)
=a1sin(ωt-κx)+a2sin(ωt+κx)
=(a1+a2)cosκx・sinωt
+(a2-a1)sinκx・cosωt
と書ける。2本の正弦波の振幅a1、a2が等しければ、節における定常波の振幅はゼロである。なおω=2πν,κ=2πk,ν=1/T,k=1/λで、Tは波の周期、λは波の波長である。
一端を固定した弦の他端に電磁音叉(おんさ)の脚をつなぎ、弦に垂直な方向に振動すれば、弦に横波の定常波が生ずる。ストロボ光で照明すれば、定常波の時間的変化を観察することができる。ガラス管内の気柱の縦波の定常波の実験としてはクントの実験がよく知られている。ヘルツは、電磁波と金属板によるその反射波との重ね合わせによって生ずる定常波を観察し、初めて電磁波の実在を実験的に証明した。
[飼沼芳郎]
振幅,周期,波長がそれぞれ等しい二つの正弦波が,図のように一つは右へ,一つは左へ進んで重なり合うと,合成された波は,二つの波がつねに打ち消し合って振動しない場所(節)と,二つの波がつねに強め合って振動のもっとも激しい場所(腹)とが交互に現れ,全体としては右にも左にも進まない。このような波を定常波,または定在波という。これに対してある方向に進む波を進行波progressive waveと呼ぶ。定常波が実際に現れるのは,多くは一端,または両端の限られた媒質の中に生じた進行波(しんこうは)が,媒質の境界で反射され,反射波と入射波とが重なり合う場合である。例えば水槽内の水面の1点を周期的にたたいて継続的に波を送り出し,周期を適当に調節すると水槽内の水面に定常波が生ずるのを見ることができる。弦楽器の弦や管楽器の管内の気柱の固有振動,棒や板,膜などの固有振動は,定常波が発生した状態と考えてもよい。音波や電波が壁で反射されるときにも定常波ができることがある。例えば壁に向かって一定の高さ,一定の強さの音を送り出しておいて,壁に向かって歩いていくと,一定の間隔で音の強いところと弱いところのあることがわかる。
→波動
執筆者:有山 正孝
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…このような場合を含めて,一般に電子の状態は一つの波動関数ψ(x,y,z,t)で表される(x,y,zは位置座標)。管の中で空気を振動させると定常波が生ずることがあるが,量子力学によれば,原子内の電子の波についても定常波があり,定常波が存在するときその状態を定常状態と呼ぶ。水素原子のような1電子系の場合,定常状態の波動関数ψ(x,y,z,t)はψ(x,y,z,0)・exp{-iEt/ħ}の形をもつ(ここでEはその状態の電子のエネルギーである)。…
…近づいてくる電車の警笛の音が高く聞こえ,それが通り過ぎると急に低く聞こえるのはその一例である。ドップラー効果
[進行波と定常波]
これまで一つの方向に進む波について述べた。このような波を進行波という。…
※「定常波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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