定斎屋(読み)ジョウサイヤ

デジタル大辞泉 「定斎屋」の意味・読み・例文・類語

じょうさい‐や〔ヂヤウサイ‐〕【定斎屋】

定斎行商人夏季に、薬箱天秤てんびんで担ぎ、その引き出しかんの音をさせながら売り歩いた。定斎売り。じょさいや。

じょさい‐や〔ヂヨサイ‐〕【定斎屋】

じょうさいや(定斎屋)

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精選版 日本国語大辞典 「定斎屋」の意味・読み・例文・類語

じょうさい‐やヂャウサイ‥【定斎屋】

  1. 〘 名詞 〙じょうさいうり(定斎売)季語・夏 》
    1. [初出の実例]「彌喧(やかま)しい定斎屋(ヂャウサイヤ)の荷と前になり後になって」(出典青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏)

じょさい‐やヂョサイ‥【定斎屋】

  1. 〘 名詞 〙 「じょうさいや(定斎屋)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「汗ばんで来たなと思ふころにはカタカタと音をさせて、定斎(ジョサイ)屋がくる、甘酒売りがくる」(出典:旧聞日本橋(1935)〈長谷川時雨西洋唐茄子)

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改訂新版 世界大百科事典 「定斎屋」の意味・わかりやすい解説

定斎屋 (じょうさいや)

暑気あたりなど夏の諸病にきくという定斎薬(じようさいぐすり),あるいは是斎薬(ぜさいぐすり)と呼ぶものを売り歩いた行商人。〈じょさい屋〉ともいい,〈是斎売(ぜさいうり)〉とも称された。《雍州府志(ようしゆうふし)》(1682)によると定斎薬は明(みん)の沈惟敬(しんいけい)が豊臣秀吉に霊薬の処方を献じ,秀吉からそれを賜った大坂の薬商定斎なる者がつくりはじめたといい,同書が書かれた当時すでに近江梅木うめのき)(現,滋賀県栗東市)の名物になっており,〈定斎和中散(わちゆうさん)〉〈是斎和中散〉と称して数軒の家がこれを商っていた。和中散にはいろいろの種類があり,これはその一種であったらしい。《守貞漫稿》によると,近世末期には上記梅木と大坂の天下茶屋(現,西成区)にこれをつくる薬屋があり,大坂では夏の間だけ,白木綿の地に濃いねずみ色の小紋を染めたじゅばんを着た男たちが,荷をかついで街を売り歩いた。江戸では赤漆塗に青貝の螺鈿(らでん)で定斎と記した薬だんす二つをてんびんでかつぎ,薬効を誇示するため笠もかぶらずに炎天下を歩いていた。薬だんすの鐶(かん)を独特のリズムで鳴らして行く定斎屋の姿は,第2次大戦前までの東京の夏の風物詩であった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「定斎屋」の意味・わかりやすい解説

定斎屋
じょうさいや

夏に江戸の街を売り歩く薬の行商人。是斎屋(ぜさいや)ともいい、江戸では「じょさいや」という。この薬を飲むと夏負けをしないという。たんすの引き出し箱に入った薬を天秤棒(てんびんぼう)で担ぎ、天秤棒が揺れるたびにたんすの鐶(かん)が揺れて音を発するので定斎屋がきたことがわかる。売り子たちは猛暑でも笠(かさ)も手拭(てぬぐい)もかぶらない。この薬は、堺(さかい)の薬問屋村田定斎が、明(みん)の薬法から考案した煎(せん)じ薬で、江戸では夏の風物詩であった。

[遠藤 武]

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百科事典マイペディア 「定斎屋」の意味・わかりやすい解説

定斎屋【じょうさいや】

〈じょさいや〉,是斎屋(ぜさいや)とも。和中散等の暑気払いの薬を売り歩く行商人。江戸時代に盛行し,《守貞漫稿》によれば和中散本舗は大坂天下茶屋と近江(おうみ)の草津のほか江戸に3軒あり,夏の炎天下にかぶり物なしで行商した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「定斎屋」の意味・わかりやすい解説

定斎屋
じょうさいや

「じょさいや」ともいう。江戸時代から行われた売薬行商人の一つ。夏期に和中散など暑気払いの薬 (定斎) を天秤棒の前後の薬箱に入れてかつぎ,薬箱のたくさんの引出しの鐶を小刻みに鳴らしながら売歩いた。

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世界大百科事典(旧版)内の定斎屋の言及

【定斎屋】より

…江戸では赤漆塗に青貝の螺鈿(らでん)で定斎と記した薬だんす二つをてんびんでかつぎ,薬効を誇示するため笠もかぶらずに炎天下を歩いていた。薬だんすの鐶(かん)を独特のリズムで鳴らして行く定斎屋の姿は,第2次大戦前までの東京の夏の風物詩であった。【鈴木 晋一】。…

※「定斎屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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