広義には施設や漁具を一定の水面に固定・敷設して営まれる漁業。免許漁業(漁業権漁業)の一種。底刺(そこさし)網、敷網、内水面で多くみられる簗(やな)・魞(えり)等も含まれるが、一般には沿岸に漁具を定置して営む定置網漁業を意味する。定置漁業は、区画漁業と同様に位置の占有利用を伴う漁業であることから、漁業権(免許漁業)設定に基づくものでなければ営んではならないとされる(漁業法68条)。
当該漁業は、日本の沿岸漁業の重要業種であり、その規模(あるいは身網(みあみ)の構造や水深)、地域性(漁具開発や近世から受け継がれてきた歴史性)、ならびに対象魚種等によりさまざまな形態区分や呼称がなされる。たとえば、通称大型定置網といわれるものには「落し網」「大謀(だいぼう)網」「大敷(おおしき)網」「サケ定置網」等が含まれ、小型定置網とよばれるものには「底建(そこたて)網」「枡(ます)網」「瓢(ひさご)網」「壺(つぼ)網」等が含まれる。前者においては、定置網を構成する身網部分(運動場、箱網、登(のぼり)網等)や垣網・道網(身網に魚を導き入れる)、基礎となる土俵・錨(いかり)・側張(がわばり)・浮子(あば)等々の敷設で数億円の投資を要するものもあり、マグロ類、ブリ類、サワラ類(およびサケ類)等の比較的大型の回遊魚をおもな対象魚種としている。
定置漁業のより重要な分類は制度区分である。一つは定置漁業権に基づく漁業であり、身網の設置される場所の水深が最高潮時で27メートル(沖縄では15メートル)以上あるもの、および北海道においてサケをおもに漁獲するもの(ただし、陸奥(むつ)湾における落し網・枡(ます)網、瀬戸内海における枡網を除く)でいわゆる大型定置網による漁業がこれにあたる。もう一つはいわゆる共同漁業権(第2種)に基づいて漁業協同組合(漁協)等の管理下で行われるもので、定置漁業権漁業と区分する意味で小型定置網として総称される場合が多い。イワシ、アジ、サバ、イカ等の多獲性、およびタラ類、タイ類、ホッケ等沿岸性の漁獲が多い。なお、2018年漁業センサスによれば当該漁業を営んだ経営体数は、全国に大型定置網439、サケ定置網792、小型定置網3869であった。
[廣吉勝治・工藤貴史 2022年8月18日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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