老農(読み)ロウノウ

デジタル大辞泉 「老農」の意味・読み・例文・類語

ろう‐のう〔ラウ‐〕【老農】

年とった農民

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精選版 日本国語大辞典 「老農」の意味・読み・例文・類語

ろう‐のうラウ‥【老農】

  1. 〘 名詞 〙 年老いた農夫。また、経験を積んだ農夫。
    1. [初出の実例]「聞昔老農歎農廃、詩人亦歎道荒蕪」(出典:菅家後集(903頃)傷野大夫)
    2. [その他の文献]〔論語‐子路〕

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改訂新版 世界大百科事典 「老農」の意味・わかりやすい解説

老農 (ろうのう)

農事に熟達し識見が優れた篤農のうち,とくに明治時代の全国的な指導者をいう。すでに江戸時代から,各地の手作地主や自作農のなかに,品種や農事の改良に努め,農書などをまとめた先覚者がふえていた。明治維新後は,作付品種や土地の売買,営業や交通が自由となり,農産物の市場も広がりはじめ,農民の営農意欲がもりあがってきた。1874年(明治7)前後からは先覚的な篤農が中心になって各地で種子交換会や農談会が開かれ,在来農法の改良と新しい技術の普及が広く行われた。他方,はじめは欧米農法の移植をはかった明治政府も,それが日本農業の実際から離れていることを反省して,1870年代後半からは各地の老農の活用をはかった。81年には著名な老農を東京に招集して第1回の全国農談会を開催したほか,農商務省府県・郡は各地の種子交換会や農談会を奨励し,全国に巡回教師を派遣した。また農会をつうじて老農の優れた経験的な技術の深化と普及が進むなど,明治農法の基礎が固まった。

 著名な老農には,イネ品種改良や耕種改善に功のあった中村直三奈良専二勧農社を組織して馬耕教師と抱持立犂(かかえもちたちすき)を全国にひろめた林遠里駒場農学校から農商務省の巡回教師となった船津伝次平勤倹力行を鼓吹した石川理紀之助などがおり,とくに中村,船津,奈良(あるいは林)を明治三老農という。しかし老農も,90年代に農科大学や農事試験場などが整備され,近代的な輸入農学が消化されると,しだいに活躍の場も狭くなっていった。
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百科事典マイペディア 「老農」の意味・わかりやすい解説

老農【ろうのう】

農事に熟達し,経験・学識に富む農民。経験的に農事の改良・普及を行い,郷土の農民を指導,また各地を巡回した。特に明治初期その活躍は農業技術の発達に貢献し,老農系統の農学は次第に欧米の農学と結合。明治の三老農とされる船津伝次平奈良専二中村直三をはじめ,林遠里石川理紀之助中井太一郎らが著名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「老農」の意味・わかりやすい解説

老農
ろうのう

明治期の勧業型地主、篤農(とくのう)。明治維新後の政府による勧農政策の推進過程において、農業技術の改良や普及に大きな役割を果たすとともに、地方自治の面などでも影響力を有していた。老農の生成は幕末期の地主層のうちに見いだされる。彼らは地主であるとともに、窮乏する農村の復旧更生の精神的な指導者としての役割を果たしていた。明治三老農(船津伝次平、奈良専二、中村直三)の一人中村直三(なかむらなおぞう)は、幕末に石門心学を学び、大和国内に心学の普及を図り、同時に農事の改良普及に努めている。維新後1874年(明治7)頃から、各地で老農を中心とする種苗交換会や農談会が開かれ、経験的な農業技術の浸透に役立てられたが、近代的な農学の発展とともにその役割は低下することとなった。

[伝田 功]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「老農」の意味・わかりやすい解説

老農
ろうのう

幕末~明治前期において農耕,営農の研究,指導にあたった地方の農業指導者。中村直三奈良専二船津伝次平林遠里石川理紀之助,中井太一郎などは明治前期の老農としてそれぞれの地方で尊敬された。

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普及版 字通 「老農」の読み・字形・画数・意味

【老農】ろう(らう)のう

老農夫。清・査慎行〔雨後〕詩 我は老農に比して、(ま)た計短し 只だ今夜の夜涼を貪つて眠る

字通「老」の項目を見る

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