離婚や遺産相続、成年後見など家庭や親族間で生じた問題に関する事件。内容により、家裁の調査官が実態を調べた資料などに基づき裁判官が結論を決める「家事審判」と、裁判官1人と民間人の調停委員2人が当事者から意見を聞き、助言や解決案を示す「家事調停」に手続きが分かれる。手続きはプライバシーに配慮して非公開で進められる。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
家庭内の紛争など、家族をめぐる事件。これまで家事事件の裁判手続については家事審判法(昭和22年法律第152号)によって規律されてきたが、家族に関する社会状況や国民の法意識の著しい変化に伴い、家族をめぐる事件も多様化・複雑化したことを受け、そのような事件を解決するための裁判手続を充実させる必要が生じてきた。そこで、家事審判法を、国民にとって利用しやすく、現代の社会状況に適合した内容とするために全面的に見直し、同法にかわる法律として、2011年(平成23)に家事事件手続法(平成23年法律第52号)が制定・公布され、家事事件手続規則(平成24年最高裁判所規則8号)とともに、2013年1月1日に施行された。
家事事件手続法は、家事事件の手続を定める。ここでいう家事事件とは、家事審判に関する事件と家事調停に関する事件である(家事事件手続法1条)。具体的には、家事審判事件、家事調停事件、履行の確保のための事件、これらに付随的・派生的な事件である。家事調停の対象となるか否かという視点からみると、下記の二つに区別することができる。
(1)家事事件手続法の別表第1に定める事件 調停によって解決することができない事項に関する事件である。たとえば、後見開始、扶養義務の設定、推定相続人の排除、遺言(いごん)書の検認などであり、比較的公益性が高い事件である。
(2)家事事件手続法第244条が規定する「人事訴訟に関する訴訟事件その他家庭に関する事件」 調停によって解決することができる事件である。別表第2に定める事件(夫婦間の協力扶助に関する事件、子の監護に関する事件、遺産の分割に関する事件など)、人事訴訟事件(親子関係の存否に関する事件、離婚に関する事件など)、民事訴訟事件(遺産の範囲に関する事件、遺留分に関する事件など)、裁判の対象とはならない事件(夫婦関係・親子関係の円満調整に関する事件など)がこれにあたる。
家事事件の特質としては、次のような諸点をあげることができる。
(1)公益性 実体的な真実に基づいた裁判がなされる要請が高い。家庭裁判所は職権で事実の調査をし、必要と認める証拠調べをしなければならないという「職権探知」の規定(家事事件手続法56条1項)、家庭裁判所は、当事者の申立てまたは職権で、他の当事者となる資格を有する者を、家事審判の手続に参加させることができるという「強制参加」の規定(同法41条2項、42条3項)などが、この公益性を担保する。
(2)簡易迅速処理の要請 簡易な方式により、迅速に事件処理をする要請が高い。そのため、電話会議システム・テレビ会議システムの活用(同法54条、64条1項、258条1項)などの規定が置かれている。
(3)秘密性 個人のプライバシーに関する情報を当事者以外の第三者に公開しない要請が高い。そのため手続の非公開(同法33条)などの規定が置かれている。
なお、家事審判、家事調停の詳細についてはそれぞれの項を参照されたい。
[伊東俊明 2016年5月19日]
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