遺留分(読み)いりゅうぶん

  • いりゅうぶん ヰリウ‥
  • いりゅうぶん〔ヰリウ〕
  • ドイツ
  • 遺留分 Pflichtteil

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

相続人一定相続人のために必ず残しておかなければならない遺産の観念的部分であり,被相続人自由処分を制約するものである。遺留分の利益を受ける (遺留分権利者) は兄弟姉妹以外の相続人であり,直系卑属直系尊属,および配偶者である。また,遺留分の割合は直系尊属のみが相続人であるときは,被相続人の財産の3分の1,その他の場合には被相続人の財産の2分の1である (民法 1028) 。遺留分権利者は,遺贈生前贈与によってその遺留分が侵害された場合には,侵害された部分の返還を請求することができる (遺留分の減殺請求) 。ただし,この請求は遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内にこれを行わなければならない (1042条) 。

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知恵蔵の解説

相続財産の中で、一定の相続人に残されるべき財産の割合。対象となる被相続人の財産には、生前贈与も含む場合がある。人は生前と同様に、遺言によっても自分の財産を自由に処分できるのが原則相続分の指定も自由で、指定がない時に法定相続が始まる。しかし遺言の自由を放任すると、被相続人に依存して生活してきた者の経済的基礎を失わせる場合があるため、設けられた制度。法定相続人のうち、直系血族と配偶者が遺留分権利者で、兄弟姉妹は権利者ではない。遺留分は、配偶者、直系卑属(子や)のいる場合は被相続人の財産の2分の1、直系尊属(父母)だけが相続人の場合は3分の1。遺留分権利者がその権利を行使するかかは、その者の自由。その権利を行使しなければ、遺留分を侵害する内容の遺贈、生前贈与等はそのままとなる。遺留分を確保する権利を遺留分殺請求権といい、相続の開始及び同請求ができる贈与または遺贈を知った時から1年以内に行使しないと時効。相続開始から10年たった場合も消滅する。

(吉岡寛 弁護士 / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

一定の相続人のために法律上必ず留保しなければならない遺産の一定部分(民法1028条以下)。相続人が直系尊属だけであるときは被相続人の財産の3分の1,その他の場合は2分の1であるが,兄弟姉妹には遺留分がない。被相続人が遺贈贈与,相続分の指定などによって,この権利を害したときは,遺留分権利者は給付された財産の返還を請求することができる。これを遺留分の減殺請求という。→相続
→関連項目遺産分割

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世界大百科事典 第2版の解説

相続人が法律上取得することを保障されている相続財産の一定額のことをいい,被相続人が行う贈与・遺贈によっても侵害されえないものである。遺留分制度は,沿革的には大陸法に由来するもので,被相続人の財産処分の自由と法定相続人の権利ないし利益との調整・妥協産物である。この制度は,多くの近代法によって採用されており,相続法体系のなかで遺留分が占める位置によって,いわゆるローマ‐ドイツ法型とゲルマン‐フランス法型とに大別することができる。

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大辞林 第三版の解説

一定の相続人のために、法律上必ず残しておかなければならない遺産の一定部分。これを受ける権利のある者は、被相続人の直系尊属・直系卑属および配偶者であり、兄弟姉妹にはその権利はない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

相続財産(遺産)のうち、一定の相続人に法律上、かならず残しておかなければならないとされている一定の割合額をいい、被相続人は贈与や遺贈によってこれを奪うことができない(民法1042条~1049条)。人は生前に自由に財産を処分できると同じように、遺言で財産を処分すること(遺贈)も自由にできるはずだが、他方、死者(被相続人)の近親者に遺産を残そうとする相続制度の趣旨からすれば、妻や子など相続人にまったく財産が残らないような処分を許すことは望ましくない。そこで、死者の自由な処分も侵しえない相続財産の一定割合額を、特定の相続人のために定めたのである。[高橋康之・野澤正充]

遺留分権利者と遺留分の額

遺留分をもっている者を遺留分権利者といい、兄弟姉妹を除く相続人、すなわち直系卑属、直系尊属、配偶者がこれにあたる(民法1042条)。兄弟姉妹は遺留分をもたないから、被相続人に子、孫、親、配偶者もなく、兄弟姉妹が相続人になる場合には、被相続人が全財産を他人にやると遺言することもできることになる。
 遺留分の額は、まず相続人がだれであるかによって、相続財産に対する遺留分全体の割合が決められる。各相続人の間では、法定相続分に比例してそれぞれの遺留分が割り当てられる。直系尊属だけが相続人であるときは、遺留分は被相続人の財産の3分の1、その他の場合は被相続人の財産の2分の1が遺留分となる(同法1042条)。[高橋康之・野澤正充]

遺留分算定の基礎となる財産

算定の基礎となる被相続人の財産とは、被相続人が死んだときにもっていた財産の額に、次にあげる贈与の価額を加え、そこから債務の全額を控除した額である(民法1043条)。加算される贈与とは、(1)死ぬ前1年間にされた贈与、(2)1年以上前にされた贈与でも、両方の当事者が遺留分権利者に損害を加えることを知っていながらした贈与(同法1044条)、(3)生前に被相続人から相続人に対して、婚姻、養子縁組のため、または生計の資本のためにされた贈与(同法903条・904条)、である。なお、控除される債務には、相続税や葬式費用も含まれる。[高橋康之・野澤正充]

遺留分侵害額の請求

被相続人が贈与や遺贈をしたために、相続人が相続する財産の額(生前に贈与を受けた額も含む)が遺留分の額を下回ることになる場合には、その不足の部分(遺留分侵害額に相当する金銭)を、贈与や遺贈を受けた者に対し、支払請求することができる。これを遺留分侵害額請求権という(民法1046条)。
 2018年(平成30)の相続法改正前は、遺留分減殺請求権が規定され(同法旧1031条以下)、その権利の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされていた。たとえば、事業を営んでいた被相続人が、その事業を手伝っていた長男に会社の土地と建物を遺贈し、これに不満を持った長女が遺留分減殺請求権を行使すると、会社の土地と建物は当然に長男と長女の共有となり、事業に支障が生じるのみならず、被相続人の意思にも反することとなる。そこで、上記の改正では、遺留分減殺請求権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにし(同法1046条1項)、相続不動産が共有状態となることを回避した。そして、遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者または受贈者が、金銭をただちに準備できない場合には、受遺者等は、裁判所に対し、金銭債務の全部または一部の支払いにつき期限の許与を求めることができることにした(同法1047条5項)。
 なお、このような改正に伴い、「遺留分減殺請求権」は、「遺留分侵害額請求権」へと、その名称が変更した。この権利は、遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間、相続開始の時から10年間を経過すれば、時効によって消滅する(同法1048条)。[野澤正充]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 相続について、一定の相続人のために法律上必ず確保しておかなければならない相続財産の割合。
※民法(明治三一年)(1898)一一三〇条「法定家督相続人たる直系卑属は遺留分として被相続人の財産の半額を受く」

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世界大百科事典内の遺留分の言及

【相続】より

…配偶者,直系卑属または直系尊属が相続人として存在する場合には,遺産の一定部分は,第三者のためにも相続人の一部のためにも,遺言によって処分することができない。この割合を遺留分といい,そのようにして相続権を保障される相続人を遺留分権者という。法定相続と遺言相続のいずれを原則と考えるかについては,後者を原則とし,前者は遺言がない場合に被相続人の意思を推定して定められた補充的制度だという考え方(遺言相続主義)と,前者を原則とし,後者を一定の範囲において法律上の相続分を再調整することを認めるために定められた調整的制度だという考え方(法定相続主義)が対立する。…

※「遺留分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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