寝間着とも書き,寝るときに着る衣服をいう。洋の東西を問わず,古くは就寝のための特別の衣服はほとんど用いられなかった。昼間の衣服のまま,あるいは下着や裸のままでシーツやわらにくるまって寝ることが多かった。日本では鎌倉時代の《春日権現験記》などの絵巻類に見られるように,貴族も装束を脱ぎ下に着ている白絹の小袖のまま夜着をひきかぶっており,庶民もまた日常着の麻の小袖のままであった。貴族の間には昼間の装束に対して,宮中に宿直するときに着用する宿直(とのい)装束があった。〈ねまき〉ということばは16世紀の辞書《運歩色葉集(うんぼいろはしゆう)》に現れており,江戸時代の《貞丈雑記》でも,〈こおんぞと云はこねまきの事也 常の小袖の形にてゆき丈をば長くする也 とのゐ物の一名をおんぞと云 とのゐ物よりはちいさき故小おんぞと云也〉と記している。江戸時代以降,じゅばんや長じゅばん,ゆかたなどを着用するようになった。とくに庶民は洗濯のきく古いゆかたを昭和まで用いていたが,しだいに専用の寝巻がつくられ用いられるようになった。現在では吸湿性のあるガーゼや平織木綿,保温性のある綿ネルなどでつくられ,形も対丈(ついたけ)で袖はほとんど筒袖や舟底袖などである。
西洋でも16世紀までは就寝のためだけの衣服はなく,多くは部屋着兼用であった。男女ともに20世紀初めまで長袖,丸い衿の丈の長いナイトシャツやシュミーズを着てナイトキャップをかぶった。19世紀後半以降,インドからイギリスに入ったパジャマが着られるようになり,女性の間でも20世紀初めには一般的になった。パジャマは,室内着であったネグリジェとともに日本では寝巻として広まった。今日では素材,色彩,デザインとも多様のものがつくられ,就寝のためだけの衣服から,部屋着,外衣として着用されるものもあらわれている。
執筆者:山下 悦子+池田 孝江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
就寝するときに着用する衣服。寝衣とも寝間着ともいう。寝巻という場合は一般的に和服のことをさし、寝具の一種とされ、寝間で着るというような室内着的な性格はない。洋式のものはパジャマやネグリジェがこれに相当する。寝巻は浴衣(ゆかた)の形式と同じであるが、男子のものは広袖(ひろそで)、布地は岡木綿、柄は格子縞(こうしじま)が多く、女子は袖丈の短い元禄袖(げんろくそで)風のもので、花柄などが多く用いられている。丈は男女ともに対丈である。近年はガーゼを二枚合わせたものが既製品として市販されている。布地は感触が柔らかく吸湿性、保温性のある綿織物が最適である。防寒用としては、保温性のあるタオル、ネルなどの厚手の布地が用いられる。古くは寝巻という独立した衣服はなかった。着衣していた衣服をそのまま肌にかけてやすむことが行われていたし、また日常の下着や肌着が寝巻に代用されていた。近世以後公家(くげ)、武士は白無垢(しろむく)の小袖を寝巻として使用した。庶民の間では、就寝時暖かくするために、衣服を肌に着るというより巻くといったつけ方をし、この慣習が一般に寝巻の語を生じさせた。
[藤本やす]
…就寝の様式によって寝具の種類および用具は異なるが,寝具には敷具,掛具と枕や敷布,携帯式寝具であるハンモックやシュラーフザック(寝袋)など,また就寝時の環境を整える具として蚊帳(屋)などが含まれる。ここでは主として敷具と掛具について述べる。
[日本]
敷具のもっとも古いものは薦(こも)と蓆(筵)(むしろ)である。材料は菰(こも),稲,菅(すげ),蒲(がま),萱(かや),藺(い)などで,最初は一重に編んで用いた。…
※「寝巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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