対物レンズ(読み)たいぶつれんず

日本大百科全書(ニッポニカ)「対物レンズ」の解説

対物レンズ
たいぶつれんず

光学器械において、もっとも物体側に位置しているレンズのこと。望遠鏡顕微鏡の対物レンズが代表的である。望遠鏡の対物レンズは、大きな焦点距離と口径をもつ。対物レンズと接眼レンズの焦点距離の比が望遠鏡の倍率である。したがって、対物レンズの焦点距離が大きいほど倍率も大である。口径は像に送り込まれる光の量に関係し、倍率が高いほど口径も大きくなければならない。光学系入射瞳(ひとみ)(望遠鏡の場合は対物レンズ)の直径と焦点距離の比を口径比という。天体望遠鏡では対物レンズの口径比は1:10ぐらい、地上用望遠鏡では明るさを必要とするので1:5ぐらいである。近距離にある物体の拡大像を得る必要と、顕微鏡全体をあまり大形にしないということのため、顕微鏡の対物レンズは、焦点距離が短く小形となっている。しかし倍率を大きくし、分解能を高めなければならないので、大きな開口数を有すること、収差補正が良好に行われることが必要である。望遠鏡と顕微鏡の対物レンズは動作状態が異なるが、一般に視界は狭く、角度にしてせいぜい数度の程度であるから、対物レンズで補正すべき収差は、色収差、球面収差、コマ収差である。二つの色の光に対して色収差を補正した対物レンズはアクロマートとよばれ、凸レンズと凹レンズを組み合わせてつくる。色収差の補正を広い波長範囲に対して行ったものがアポクロマート対物レンズである。これは、3枚のレンズを用いたり、蛍石などの特殊な材料を使ったレンズでつくられる。高倍率の顕微鏡対物レンズでは、試料とレンズの間の空隙(くうげき)を、屈折率がレンズや試料のものに近いセダー油などの液体で満たす。これを液浸対物レンズという。

[三宅和夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「対物レンズ」の解説

対物レンズ
たいぶつレンズ
objective lens

望遠鏡や顕微鏡などの光学系で,物体に面するほうのレンズ。これに対してに接する側のレンズを接眼レンズという。対物レンズは光学系の分解能や明るさなどの性能を大きく左右する。

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精選版 日本国語大辞典「対物レンズ」の解説

たいぶつ‐レンズ【対物レンズ】

〘名〙 (レンズはlens) 望遠鏡や顕微鏡のような光学機械で、対象物に近い方にあるレンズ。物体の最初の像がここで作られる。対物鏡。→接眼レンズ。〔現代大辞典(1922)〕

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世界大百科事典内の対物レンズの言及

【レンズ】より

収差
【レンズの性能】

[結像性能]
 レンズの多くは実像を作る配置で用いられる。顕微鏡や望遠鏡の対物レンズによる拡大または縮小した空中像,投影レンズによるスクリーン面への投影,写真レンズによるフィルム面への記録などである。しかし一部には拡大鏡や接眼レンズのように拡大した虚像を作ってその像を目の網膜に結ばせるものもある。…

※「対物レンズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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