デジタル大辞泉
「尋常性白斑」の意味・読み・例文・類語
じんじょうせい‐はくはん〔ジンジヤウセイ‐〕【尋常性白斑】
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家庭医学館
「尋常性白斑」の解説
じんじょうせいはくはん【尋常性白斑 Vitiligo Vulgaris】
[どんな病気か]
皮膚の色がぬけ、白い斑点(はんてん)ができるものです。後天的なもので、白斑に先立つ症状はとくにありません。
尋常性白斑には、子どもからお年寄りまですべての年齢層にでき、少しずつ数が増え、ついには全身が白くなってしまう進行性白斑(しんこうせいはくはん)(A型白斑(がたはくはん))と、子どもから30歳ごろまでの若い時期に始まり、ある特定の皮膚分節(ひふぶんせつ)(ある神経の支配範囲)だけに急速に広がりますが、1年前後で進行がとまり、以後は生涯そのままの状態が続く分節性白斑(ぶんせつせいはくはん)(B型白斑(がたはくはん))の2種類があります。
[症状]
進行性白斑の始まりは、親指の先ほどの大きさの白斑がまず2~3個できます。そしてしだいに数が増え、広い範囲に広がっていきます。顔面、胴体(どうたい)、手足など、どこにでもできますが、数が多くなると左右対称に分布することが多くなります。ベルトや下着でしめつけられる場所や、はきもので擦(こす)れる場所に好発します。
分節性白斑は、ふつう片側性(へんそくせい)(からだの左右どちらか半分)で、帯状疱疹(たいじょうほうしん)という、神経分布にそって神経痛と水疱(すいほう)が生じる病気とまったく同じように白斑が分布します。顔の場合は目の高さ、口の高さで分布が分かれ、胴体の場合は脊椎(せきつい)ごとにからだを輪切りにした形(分節)で分布する特徴があります。初めは小さな白斑が数個できるだけですが、数か月から1、2年でその分節内いっぱいに広がり、その後はほぼ同じ状態が一生続きます。
[原因]
進行性白斑の原因は自己免疫現象(じこめんえきげんしょう)であると考えられています。皮膚のメラニン色素をつくる色素細胞(メラノサイト)に対して免疫反応がはたらき、自分のからだの一部であるのに、その色素細胞を壊してしまうために色がぬけると考えられているのです。
分節性白斑の原因は、神経末梢(しんけいまっしょう)から分泌(ぶんぴつ)される神経伝達物質が色素細胞を破壊するためと考えられていますが、詳しいことはまだ不明です。
[治療]
進行性白斑は、新しいうちは、ステロイドの外用療法や、長波長紫外線療法がよく効きます。これは、長く使用しても副作用のない、弱いステロイド軟膏(なんこう)を1日2回きちんと塗り、週に2回ブラックライトという長波長紫外線をあてる方法です。ソラーレンという、光に敏感になる薬を服用したり塗ったりしてライトをあてると治療時間が短くてすみます。日光浴でも同じ効果がありますが、どちらの場合も、何年もたった古い白斑ではあまり効果はありません。
分節性白斑では、ステロイド療法や紫外線療法の効果はあまり期待できません。しかし、幸いなことに、この白斑は数年で進行がとまります。とまった後に表皮移植手術を行なえば、あとかたもなく治ります。この表皮移植は、健康な皮膚に吸引水疱(きゅういんすいほう)をつくり、白斑部分の表皮をはがして、その水疱の蓋(ふた)を移植する方法です。
[日常生活の注意]
進行性白斑は、治療で一時的に白斑が消えても、いずれどこかに再発します。しかし、新しいうちは薬がよく効きますから、週1回は新しい白斑がないかどうか全身を調べ、早期発見・早期治療を心がけます。今のところ、根治(こんじ)はできませんが、目立たない状態にコントロールすることはできます。
分節性白斑は表皮移植によって根治できます。焦ってその進行期にいろいろな治療を試みても皮膚をいためるだけのことが多いので、専門医の管理下で安定期に入るのを待ち、表皮移植術を受けるのが最善です。
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尋常性白斑
じんじょうせいはくはん
Vitiligo vulgaris
(皮膚の病気)
後天的に皮膚の色が部分的に抜けて白くなる病気で、比較的よくみられます。尋常性とは「普通の、ありふれた」という意味です。
皮膚の最外層にある表皮のなかに存在する、メラニン色素をつくる細胞(色素細胞)が消失するために、皮膚の色が抜けて白くなります。
色素細胞が消失する原因は明らかにされていませんが、色素細胞に対する自己抗体ができて色素細胞を攻撃するために消失するという説、神経の異常が原因であるという説、皮膚での活性酸素を除去する機能が低下して色素細胞が壊れるという説などがあります。
生後数年から数十年後に、皮膚の色が部分的に抜けて白くなります。白くなる部分は大小さまざまで、拡大したり、あるいは別の皮膚の部分でも色が抜けることがあります。頭部では、白斑になった部分に白髪ができることもあります。
体の左右どちらか片側にのみ症状が出るタイプ(分節型)、体の両側に出るタイプ(汎発型)、皮膚の一部分だけに出るタイプ(限局型)があります。
診断のための特別な検査は必要ありません。汎発型では、甲状腺の検査を行うと病気が見つかる場合もありますが、その頻度は1割以下です。
ステロイド薬、ビタミンD3、タクロリムスの外用療法や紫外線療法があります。紫外線療法のなかでも、UVB(中波長)のごく狭い周波数の紫外線だけを照射するナローバンドUVB療法が、よい効果を示すことがわかってきました。
体の片側にのみ症状が出るタイプでは、表皮の移植手術が効果的です。また、セルフタニング剤を皮膚に塗ると3~4日間は皮膚を着色することができます。
皮膚科の医師に相談してください。根気よく治療をすることが大切です。
堀川 達弥
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
尋常性白斑
じんじょうせいはくはん
後天性の色素減少症の一つで、俗称白なまず。大小の類円形または不整形の完全脱色素斑で、白斑周囲の健常皮膚は色素増強を示すことが多いため境界ははっきりしている。脱色素斑部の毳毛(ぜいもう)(うぶ毛)または剛毛は、長期間存在する患部では白毛となることが多い。通常は自覚症状に乏しいが、ときにかゆみが先行したり、随伴することもある。好発部位はとくになく、全身至る所に発生するが、顔、胸、手背、腋窩(えきか)(わきの下)、外陰部、肘(ひじ)、膝(ひざ)などによくみられる。臨床的に身体の一部にだけ発症する限局型、一定の神経支配領域に一致して片側性に発症する分節型、比較的広範囲に散在する汎発(はんぱつ)型に分類される。原因については自己免疫説、神経障害説などがあるが、まだ定説はない。治療はソラレン療法、副腎(ふくじん)皮質ホルモン外用療法などがあるが、難治であることが多い。
[染谷 通]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の尋常性白斑の言及
【しろなまず】より
…医学的には尋常性白斑vitiligo vulgarisという。後天性の完全色素脱出斑で,全身どこにでも生ずる。…
※「尋常性白斑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」