琉球王国の王統。第一尚氏と第二尚氏の区別がある。沖縄に山北(さんほく),中山(ちゆうざん),山南とよばれる三つの小国家が対立していたころ,佐敷(さしき)地方(南部東岸)の按司(あんじ)(首長)であった尚巴志は急速に勢力を増し,1406年にまず中山の覇権を手中にし父尚思紹をして中山王につかせた。16年,尚巴志は山北を滅ぼし,29年にはついに山南をも攻略して初の統一王朝(琉球王国)を樹立した。だが,この統一王朝は69年に有力者金丸を推す勢力により滅ぼされ,金丸が即位して尚円と号し新しい王朝をひらいた。以上の経過から,尚巴志の手で樹立された統一王朝を第一尚氏,尚円によって新たに開始された王朝を第二尚氏とよび,沖縄の歴史では区別している。
第一尚氏は7代60年余つづいた。第二尚氏は7代尚寧王代の1609年,薩摩島津氏の軍事的征服をうけその管理下におかれた(島津侵入事件,琉球征服)。だが王国体制は温存されて王統もそのまま存続し,黄金期といわれる13代尚敬の時代などをへて19代つづいた。1879年3月,明治政府は王国体制を廃して沖縄県の設置を断行,尚泰に王宮首里城の明渡しを命じた。ここに450年余におよぶ琉球王国の歴史は終止符を打たれた。尚泰は侯爵に列せられたが,尚円からかぞえて19代400年余におよぶ第二尚氏の歴史もこの時点で終了したことになる。〈尚〉姓は尚巴志の時代に中国皇帝より琉球国王の姓として与えられたものだという。近世になり王族の流れをくむ門閥は王家の尚姓と区別するために〈向(しよう)〉姓を名のるならわしとなった。琉球の正史《中山世譜》は諸士の家譜(系図)に対して王家の家譜としての役割をもち,尚氏の系統を整序した史書でもある。王家の墓の玉御殿(たまうどん)(玉陵)は第二尚氏の墓であり,その末裔は今日でも尚姓を用いる。
執筆者:高良 倉吉
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琉球(りゅうきゅう)王国の王および王族の姓。15世紀初期、琉球国王の姓として中国皇帝より贈られたものといわれ、以後代々この姓を用いる習わしとなった。沖縄史上では、とくに第一尚氏・第二尚氏として王統を区別している。第一尚氏は尚思紹(しょうししょう)(在位1406~1421)から尚徳(しょうとく)(在位1461~1469)まで7代続いた。しかし尚徳の早世とクーデターにより第一尚氏は王位を追われ、かわって第二尚氏が尚円(しょうえん)(在位1470~1476)から尚泰(しょうたい)(在位1848~1879)まで、19代400年余にわたって王位についた。最後の国王尚泰は、1872年(明治5)琉球藩設置により政府から「琉球藩王」の称号を与えられ、1879年の琉球処分により侯爵となった。なお傍系は、区別のために1691年から「向(しょう)」姓を用いるようになった。
琉球国王は中国皇帝の冊封(さくほう)を受ける慣例となっていたが、中国はじめ海外諸国に対しては一貫して尚姓を用いた。ただし、中国や徳川幕府は中山(ちゅうざん)王と呼称し、島津氏も一時国司(こくし)を称させたが、のち中山王と称した。
[高良倉吉]
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琉球王家の姓。2系統があり,一つは1406年中山を奪い29年に三山統一をはたした尚思紹(しょうししょう)・巴志(はし)父子の系統で,第一尚氏。もう一つは1469年に第一尚氏7代尚徳にかわって王位についた金丸(かなまる)(のちの尚円(しょうえん))を祖とする王統で,第二尚氏。1879年(明治12)の廃藩置県まで19代400余年間続いた。尚の姓は思紹が明朝から賜ったと王府の正史は記すが,「明実録」などには記述がない。子の尚巴志は当初から尚巴志と記されており,尚は姓ではなく名の一部で,元来中国むけに宛字したと推測される。以後王は尚姓を用い,第二尚氏の祖も王統の連続をよそおって尚姓を踏襲した。なお王子までは尚姓,孫の代(按司)からは欠画して向(しょう)の字を用いた。
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…しかし彼の死去後,王朝の基盤は動揺し,53年には王位継承をめぐる内乱(志魯(しろ)・布里(ふり)の乱)が,58年には有力按司の反乱(護佐丸(ごさまる)・阿麻和利(あまわり)の乱)が起こった。そして69年,金丸を中心とする勢力のクーデタが起こり,尚巴志の築いた王朝(第一尚氏王朝)は瓦解した。 即位して尚円と号した金丸は新しい王朝(第二尚氏王朝)を始めたが,その後を継いだ尚真(在位1477‐1526)は王国の基盤の強化に尽力し,未曾有(みぞう)の繁栄期を築いた。…
※「尚氏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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