農家の屋敷内につくられた樹林で,多様な目的,用途をもち,いずれも農家の生活,経済と密接な関係をもつものである。屋敷の外縁に沿ってつくられるものは主に境界を区分するとともに防風,防火,防砂などの防災効果を期待するもので,冬の季節風の強く吹く地方では防風効果が大きく,島根県の斐川(ひかわ)平野にみられる築地松(ついじまつ)や関東平野にみられるケヤキ,カシ類などからなる屋敷林はその一例である。これらの外縁の林の内側や屋敷内の一部にスギ,ヒノキ,ケヤキ,カシ類,ナラ類などが用材や燃材の採取を目的として造成され,しばしば竹林がたけのこや竹材の生産を目的としてつくられた。さらに庭の一部には果樹が植えられた。これらは農家の生活に有用であったばかりでなく,樹林と屋敷とが一体となった美しい景観をもつくり,それらが集合して,全体として農村の風景をつくる重要な要素となっている。その形,規模,樹種は必ずしも一定しておらず,多様であるが,いずれの場合でも農家の生活と強く結びついていたため,樹林の管理は集約的に行われ,屋敷林が維持されてきた。最近は農家の減少,生活様式の変化にともない,このような屋敷林は急速に減少しつつある。なお,これに関連するものとして,村民の家屋敷に接続して用材などに利用していた林で,居久根林(いぐねばやし),居懸り(いがかり),合壁山(ごうへきやま),四壁(しへき),家掛林,垣入(かいによ)などといわれたものがある。規模は屋敷まわりの小さいもので,自由に利用できたが,無断伐採禁止の留木指定があり,成木は登録されていて,藩の伐採許可を要するなどの制限があったという。
執筆者:堤 利夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…また,平素からの保護管理が必要である。なお,屋敷林の中には防風を目的として造成されたものが多い。これは冬の偏西風(季節風)を抑えて寒さをしのぎ生活を楽にするためのもので,敷地の西側,北側に造成されている。…
…中期以降(幕領では寛文・延宝検地以後)になると,古検(こけん)で除地とされていた村役人の屋敷も,新検では高請地に加えられて年貢を賦課されるようになった。屋敷検地の縄入れにあたっては,田畠の畔引(くろひき)と同様に,〈屋敷ハ四方を壱間充四壁引(しへきひき)に除の定法〉(《地方凡例録(じかたはんれいろく)》)とされ,屋敷に付属する屋敷林についても〈藪林(やぶはやし)ある屋敷ハ,藪林をも除きて縄を入る〉(同前)とされ,四壁および屋敷林は屋敷検地の対象外におかれた。屋敷の石盛(こくもり)は一般に,上畠に準じられていた。…
※「屋敷林」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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