やまごえあみだ‐ず‥ヅ【山越阿彌陀図】
- 〘 名詞 〙 阿彌陀如来来迎の図の一種。山あいから半身を現わして来迎する阿彌陀と聖衆を描いた特異な来迎図。特に、次のものが著名。
- ( 1 )禅林寺本。掛幅。絹本着色。鎌倉前期の作。中央上部に正面向きの阿彌陀が山の背後に半身を現わし、両脇侍は雲に乗ってこちら側にある異色の図様。国宝。同寺蔵。
- ( 2 )旧上野家本。掛幅。絹本着色。鎌倉後期の作。山あいにやや横向きの七分身の阿彌陀と六人の聖衆が現われ、その乗る雲はすでにこなたへと近づいてくる幻想的な来迎図。国宝。京都国立博物館蔵。
- ( 3 )金戒光明寺本。小型の屏風。三尊は三分身しかみえず、阿彌陀の手印に五色の糸がついている。同寺蔵。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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山越阿弥陀図 (やまごえあみだず)
山の端の稜線の向こう側に阿弥陀如来がその上半身をあらわす,という自然の景物と阿弥陀来迎(らいごう)の幻想が交錯する特殊な〈来迎図〉。代表作としては13世紀初めの禅林寺本(国宝),同後半の京都国立博物館本,14世紀前半の金戒光明寺本があり,現存作例はいずれも鎌倉時代以降のものである。その成立の背景には,古代以来の山岳に対する信仰があり,さらに山の端の稜線を此岸(穢土(えど))と彼岸(浄土)とを隔てるものとしてとらえる思想があった。禅林寺,金戒光明寺両本は,阿弥陀如来の印相を転法輪印にあらわし,その大きな光背が月を象徴するなど,密教の月輪(がちりん)観や観想念仏を胚胎する真言系浄土教思想の影響下に生まれたことを示す。
また京都国立博物館本は,来迎印の阿弥陀如来に奏楽の菩薩が従うなど,通常の来迎図に近い。このように〈山越阿弥陀図〉は鎌倉時代における〈来迎図〉とそれを生んだ思想の多様な展開を語るものである。
→浄土教美術
執筆者:須藤 弘敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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「山越阿彌陀図」の意味・わかりやすい解説
山越阿弥陀図【やまごえあみだず】
来迎図の一形式。浄土から迎えにくる阿弥陀三尊が山越しに現れるさまを描いたもので,恵心僧都の感得と伝える。鎌倉時代に作られ,禅林寺,上野家,金戒光明寺等のものが著名。金戒光明寺のものは往生する者が手にすがるように阿弥陀の手に五色の糸がついている。→浄土教美術
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山越阿弥陀図
やまごしあみだず
阿弥陀来迎図の一変形。阿弥陀如来が観音,勢至菩薩などを伴い,山のかなたに上半身を現して来迎してくるさまを表わした図。鎌倉時代の禅林寺本,金戒光明寺本,旧上野家本が代表的な遺品としてあげられる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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