山路主住(読み)やまじぬしずみ

精選版 日本国語大辞典 「山路主住」の意味・読み・例文・類語

やまじ‐ぬしずみ【山路主住】

江戸時代和算家天文学者通称彌左衛門。字は君樹。号連貝軒。数学の関流五段階の免許制度を設け、改暦事業に参加幕府天文方となる。宝永元~安永元年(一七〇四‐七二

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改訂新版 世界大百科事典 「山路主住」の意味・わかりやすい解説

山路主住 (やまじぬしずみ)
生没年:1704-72(宝永1-安永1)

江戸中期の暦学者,数学者。幼名は久次郎,通称弥左衛門,字は君樹,号は聴雨,または連貝軒という。幕府の天文方で,渋川六蔵および西川忠次郎の作暦の手助けをする。主住は,中根元圭久留島義太松永良弼らに学び,関流の数学書が彼のところに集まった。関流の入門書は山路によって整理された。有馬頼徸の保護を受け,弟子藤田貞資有馬に推薦する。弟子には,有馬のほか安島直円,戸板保佑,松永貞辰ら多くの秀才がいる。子孫は代々天文方に仕え,山路家の名を高めた。山路は宝暦甲戌暦作製者の中心となったが,この暦の評判はよくなかった。山路には数学の大きな業績はないが,循環小数の研究は名高い。《一算得商術》の中で,整数逆数を小数になおしたとき,その循環節の桁数を決定する方法を述べている。これらのほか多角形の辺と対角線の関係式や方陣の研究なども残している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山路主住」の意味・わかりやすい解説

山路主住
やまじぬしずみ

[生]宝永1(1704)
[没]安永1(1772).12.11.
江戸時代中期の暦学者,和算家。通称は弥左衛門,字は君樹。連貝軒,聴雨と号した。享保9 (1724) 年,21歳のときに松前主馬組御徒に召され,同 18年支配勘定,元文4 (39) 年小普請入を命じられた。寛延1 (48) 年に渋川則休,西川正休の補暦之御用手伝となり,京都および江戸を往復して,宝暦甲戌暦の修暦事業 (55) に参加,常にこの両天文方の補佐として働き,明和1 (64) 年に天文方になった。中根元圭,久留島義太,松永良弼に師事して和算を学び,循環小数,角術などの研究で知られ,それに関する著書が多い。また,関流宗統3伝として,関流の数学教育の入門書『関流算法草術』 (45巻) のほか多数の数学書を書いた。安島直円は彼の門弟の一人である。谷中大泉寺に葬られた。

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朝日日本歴史人物事典 「山路主住」の解説

山路主住

没年:安永1.12.11(1773.1.3)
生年:宝永1(1704)
江戸中期の暦学者,数学者。宝暦の改暦に加わった。数学は初め久留島義太に,のちに中根元圭,さらに松永良弼に学び関流三伝を継いだ。通称弥左衛門,初め松前主馬組徒士のち青山備前守組小普請組に入る。寛延1(1748)年渋川則休,西川正休の補暦手伝となり同3年改暦御用のためふたりに従って上京し,翌年もふたたび上京して改暦に参画。改暦終わって宝暦5(1755)年宝暦暦施行。明和1(1764)年61歳で江戸幕府の天文方となり,100俵を賜り渋川家につぐ次席となった。子孫は代々天文方に仕える。循環小数の研究など算学の著書は多い。

(内田正男)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山路主住」の意味・わかりやすい解説

山路主住
やまじぬしずみ
(1704―1772)

江戸中期の数学者。幼名久次郎、のちに弥左衛門、字(あざな)は君樹、号は連貝軒または聴雨。数学、暦学を中根元圭、松永良弼(よしすけ)、久留島義太(くるしまよしひろ)に学ぶ。渋川六蔵、西川正休(まさよし)の作暦の助手となる。弟子の藤田貞資(さだすけ)、安島直円(あじまなおのぶ)を手伝わせて宝暦甲戌暦(ほうれきこうじゅつれき)をつくる。主住は有馬頼徸(ありまよりゆき)ほか多くの数学者を育てた。刊行書はないが、循環小数についての論文「一算得商術」などが伝えられている。山路家は代々天文方に仕えた。

[下平和夫]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山路主住」の解説

山路主住 やまじ-ぬしずみ

1704-1773* 江戸時代中期の暦算家。
宝永元年生まれ。山路徳風(よしつぐ)の養父。中根元圭,松永良弼(よしすけ)らにまなぶ。改暦御用を命じられ,宝暦甲戌暦(こうじゅつれき)を作製。明和元年天文方となる。循環小数の研究でも知られる。安永元年12月11日死去。69歳。江戸出身。字(あざな)は君樹。通称は弥左衛門。号は連貝軒。編著に「算法集成」など。

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世界大百科事典(旧版)内の山路主住の言及

【関流】より

…関流というのは,関孝和の弟子,あるいは孫弟子に教わったという意味である。関流という名称を初めて使ったのは関孝和の孫弟子松永良弼で,松永の弟子山路主住から関流何伝というようになった。初伝荒木村英,2伝松永良弼,3伝山路主住,4伝安島直円,藤田貞資,5伝日下誠,6伝和田寧,内田五観と続く。…

【魔方陣】より

…久留島義太は桂馬飛びの方法と簡単な並べ方を,安島直円はフランクリン型を発見した。山路主住の五方陣,会田安明の四方陣変換の研究が著しい。【平山 諦】
【中国】
 中国での歴史は古く縦横図とよばれた。…

【和算】より

…一方,関西では鎌田俊清(1678‐1747)が《宅間流円理(たくまりゆうえんり)》(1722序)をまとめ,arcsinxやsinxのべき級数展開を示している。
[有馬頼徸]
 松永良弼の弟子山路主住(1704‐72)は,中根元圭,松永良弼,久留島義太の業績を受け継いで,これを弟子に伝えた。彼自身の業績としては循環小数の研究がある。…

※「山路主住」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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