近畿・中国地方の日本海沿岸を走る西日本旅客鉄道の線路名称。京都―幡生(はたぶ)間673.8キロメートル、長門(ながと)市―仙崎(せんざき)間2.2キロメートル。山陰地方海岸地域を縦断し、沿線には綾部(あやベ)、福知山、豊岡(とよおか)、鳥取、倉吉(くらよし)、米子(よなご)、安来(やすぎ)、松江、出雲(いずも)、大田(おおだ)、江津(ごうつ)、浜田、益田(ますだ)、萩(はぎ)、長門などの都市、山陰海岸国立公園、大山隠岐(だいせんおき)国立公園、北長門海岸国定公園などに属する観光地がある。かつては山陰地方の縦貫幹線鉄道と考えられたが、1970年代以降には、山陰地方と近畿地方を結ぶ幹線交通は、新幹線と陰陽横断鉄道またはバスの組合せが主力となり、航空交通の整備とも相まって、山陰本線は多くの地方都市を中心としたローカル鉄道が連続した形態の鉄道とみなされるようになった。直流電化区間は、京都―城崎(きのさき)温泉、伯耆(ほうき)大山―西出雲間の計229.2キロメートルにとどまり、複線区間は京都―園部、綾部―福知山、伯耆大山―安来(やすぎ)、東松江―松江、玉造温泉(たまつくりおんせん)―来待(きまち)間に限られる(2011)。その建設は区間ごとに別個に進められ、京都―園部間は京都鉄道(1897~1899年開業、1907年国有化)、綾部―福知山間は阪鶴(はんかく)鉄道(1904年開業、1907年国有化)と、私鉄として開業し、園部―綾部間は官鉄舞鶴(まいづる)線として1910年(明治43)それぞれ開業した。福知山以西の区間は陰陽連絡線として、1902年、境(さかい)(現、境港(さかいみなと))から着工したのに始まり、山陰東線・西線の名称で路線を逐次延長、1912年、京都―出雲今市(いまいち)(現、出雲市)間の全通とともに山陰本線となった。出雲市以西では、浜田線、美祢(みね)線、小串(こぐし)線などの名称で、1913~1933年(大正2~昭和8)に開業、幡生―小串間は長州鉄道(1914年開業、1925年国有化)を買収したものであった。1987年、日本国有鉄道の分割民営化に伴い、西日本旅客鉄道に所属。
[青木栄一・青木 亮]
東海道本線京都駅を起点とし,城崎付近から日本海沿いに西下,山陰地方を縦断して山陽本線幡生(はたぶ)駅(下関市)に至る673.8kmのJR西日本の営業線。東北本線の739.2kmに次いで2番目に長い。ほかに長門市~仙崎間2.2kmの支線がある。おもな経由地は福知山,鳥取,米子,松江,出雲の各市である。山陰地方と山陽地方とを連絡する鉄道として,1892年制定の鉄道敷設法に予定線として定められ,1900年5月鳥取県境港から米子,鳥取方面へと建設が開始された。建設当初の予定ルートは,境港から米子,鳥取を経て姫路へぬけるものであったが,その後城崎,和田山経由の現ルートに変更された。京都側からと,米子から鳥取方面および出雲方面へと順次開業し,全通は33年2月である。なお京都~園部間は1907年8月京都鉄道から,幡生~小串(こぐし)間は25年6月長州鉄道からそれぞれ買収した。京都~園部間は愛称・嵯峨野線。
執筆者:村山 繁樹
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