岩のドーム(読み)イワノドーム(英語表記)Qubba al-Ṣakhra[アラビア]

デジタル大辞泉 「岩のドーム」の意味・読み・例文・類語

いわ‐の‐ドーム〔いは‐〕【岩のドーム】

エルサレム旧市街にあるイスラム様式の神殿。7世紀にウマイヤ朝が建設し、いくたびの改修を経て青色の壁と金色ドーム屋根という現在の形となった。イスラム教のほかキリスト教ユダヤ教聖地としている。

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改訂新版 世界大百科事典 「岩のドーム」の意味・わかりやすい解説

岩のドーム (いわのドーム)
Qubba al-Ṣakhra[アラビア]

エルサレムのかつてユダヤ教やキリスト教の聖域でもあった所に建てられた特異な宗教建築。685・686または687・688年から691・692年にウマイヤ朝カリフアブド・アルマリクの命により建立。八角形プランの聖殿内部では,中央に置かれた巨石の周囲を歩廊が二重に取り巻いている。外壁のタイル,ドームなどは,オスマン帝国時代に補修されたもの。中央の聖石から預言者ムハンマドが天界をめぐるミーラージュ(昇天)に旅立ったという伝説がある。構築的にはイスラム以前の伝統を踏襲しているが,内外の壁面を飾るアラビア語の銘文が示唆するように,四方どこからでも眺めることができた岩のドームの機能は,近隣諸国の異教徒を征服したイスラムの力を誇示する記念碑的なものであったともいえよう。内部のアーチなどの赤・緑・金色で施された華麗なモザイク装飾では,王冠・花環・葡萄唐草が象徴的に表現され,イスラム初期の造形感覚を知るうえにも,きわめて重要な資料となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「岩のドーム」の意味・わかりやすい解説

岩のドーム
いわのドーム
Qubba al-Sakhra; Dome of the Rock

アラビア語でクッバ・アッサフラと呼ばれ,エルサレムのアクサー・モスクを含む聖域内に建つ,現存するなかでは最古のイスラム建築。ウマイヤ朝のカリフ,アブドゥル・マリクが 687~691年に建立。サフラ (聖なる岩) をおおう中央ドームの周囲には,八角形回廊が2重にめぐらされ,幾何学的である。サフラはイスラム以前からアブラハムの伝説と結びつき神聖視されており,またムハンマドが昇天し,天界をめぐるために旅立った場所ともいわれる。当時メッカと敵対していたマリクは,巡礼の対象をカーバ神殿からここに変えるとともに,他宗教に対する勝利の記念となることを意図した。内部は基部が大理石張り,上部がモザイク装飾で,木造ドームの外装は鍍金銅板 (現在は金メッキのアルミ板) であり,外壁は 16世紀にモザイクから彩釉タイル装飾に改装されている。ビザンチン建築を受継ぎつつ,それを凌駕しようとしたウマイヤ朝建築の代表作。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「岩のドーム」の解説

岩のドーム(いわのドーム)
Qubba al-Ṣakhra

ウマル・モスクともいう。イェルサレムにあるイスラーム最古の建築物。7世紀後半にウマイヤ朝カリフ,アブド・アルマリクの命令で建設された。名前の由来となった中央にある岩には,そこから預言者ムハンマドが天に昇ったという伝説(ミーラージ)があり,イェルサレムにおける最も重要なイスラームの聖地となっている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「岩のドーム」の解説

岩のドーム
いわのドーム

初期イスラームを代表する建築物
7世紀にウマイヤ朝カリフ,アブド=アルマリクの命によりイェルサレムに建てられた。中央の巨岩からムハンマドが昇天したとされ,金箔をはったドームが有名である。

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世界大百科事典(旧版)内の岩のドームの言及

【エルサレム】より

…19世紀半ばまでは全市民が城壁の内側で生活していたが,その北西部分がキリスト教徒地区,南西部分がアルメニア人地区,中央部の南がユダヤ教徒地区,北東部から中央部にかけてがイスラム教徒(ムスリム)地区と分かれていた。大きく南東隅に広い平たんなスペースをとって,イスラム教徒がハラム・アッシャリーフal‐Ḥaram al‐Sharīf(高貴なる聖所)と呼ぶ区域があり,ここに金色に輝く岩のドームアクサー・モスクとがある。この区域はもとソロモンの建立した第一神殿,またバビロン捕囚後に再建された第二神殿があった場所で,モリヤMoriahの丘とも呼ばれた。…

※「岩のドーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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