差異心理学は、人間の個人および集団にはさまざまな差異が存在するという事実に基づき、それぞれの特質を明らかにすることによって、個性や文化特質とは何かを解明することを目的にしている。差異としては、性差、年齢差、文化差、民族差などさまざまな現象があるが、それらの一般論を求めるよりは、むしろ個人差そのものに関心を向けることに特徴がある。
差異心理学の研究は、個人間および集団間に存在する差異の事実を調べ、それらがおこってくる原因、すなわち、気候、風土などの環境条件、社会条件、遺伝条件、発達段階の条件、学習や経験などの後天的条件など差異に影響する諸条件の分析を行う。差異を構成する要因としては、身体的な特性、知能の高低、パーソナリティー、性差などが考えられる。人間の意識と行動に関する、科学的な一般原理を追究することを目ざして発足した心理学にとっては、差異のなかに存在するであろう普遍のものを追究するのが研究の目的ではあるが、かけがえのない個人としてのひとりひとりの人間を考えるとき、個性の解明を目的とする差異心理学は意義のあるものといえる。
[春木 豊]
『三好稔著『差異心理学』(1951・金子書房)』
個人,男女,民族などによる人間の精神的特性や過程の差異について,その特徴や構造を明らかにしようとする心理学の一部門。ビネは,個人間変異と個人内変異を主たる問題とすべきと主張し,また《個人差の心理学》(1900,改訂1911)を著して差異心理学を体系化したシュテルンWilliam Sternは,(1)個人差,集団差,(2)差異を規定する要因,(3)差異の表現方法,を問題にすべきとした。
執筆者:児玉 憲典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…彼はライプチヒ大学に世界最初の正式な心理学実験室を開設し(1879),この用語を使用した。実験心理学的研究においては思弁,偶然的観察(非統制的観察),非実験室的データ(各種の調査データなど)は原則として排除され,その点で他の心理学の分野である社会心理学,発達心理学,差異心理学,臨床心理学,動物心理学などと対比的に考えられてきた。しかし広義には現代心理学すべてが実験心理学であるともいえる。…
…これは主としてドイツ語圏で発展し,哲学的傾向がみられるのが特徴的である。個々の人間の性格の個人差や性格特性の差異を研究する性格学を差異心理学ともいう(ハイマンス)。性格学が学問として確立したのは類型学からである。…
※「差異心理学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新