市場化テスト(読み)シジョウカテスト

デジタル大辞泉 「市場化テスト」の意味・読み・例文・類語

しじょうか‐テスト〔シヂヤウクワ‐〕【市場化テスト】

公共サービス管理運営を、官業と民間企業の競争入札によって決定する方式。サービス内容の向上と経費削減が狙い。1980年代に米英で始まる。官民競争入札

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図書館情報学用語辞典 第5版 「市場化テスト」の解説

市場化テスト

従来「官」が独占してきた公共サービスを,「官」と「民」とが対等な立場で価格と質を競い合い,最も優れた者がサービスの提供を担う官民競争入札制度.1980年,肥大した地方政府のコスト削減を目的に英国のサッチャー政権で導入されたことが嚆矢である.日本では,行政需要の多様化や行政組織の肥大,ならびに,逼迫する公財政などを背景に,2006(平成18)年「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(通称 公共サービス改革法)が施行された.その対象は,行政処分を除き,国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービスであり,独立行政法人附設の図書館や公立図書館も含まれる.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「市場化テスト」の意味・わかりやすい解説

市場化テスト
しじょうかてすと

国や地方自治体が独占してきた公共サービスの担い手を、民と官がサービスの質と価格で競い合って、より優(すぐ)れたほうに決める仕組み。官民競争入札ともよばれ、官業の民間開放を進める手段として使われている。2006年(平成18)、首相であった小泉純一郎の構造改革路線の一環として、実施方法などを定めた公共サービス改革法が成立。国民年金保険料の徴収、統計調査、刑務所運営、国立公園の維持管理業務などが民間に開放された。

 2003年(平成15)に政府の総合規制改革会議が導入を提言し、2005年から段階的にハローワーク事業など八つの公共サービスで試行的に導入した。2006年、公共サービス改革法が施行されたことにより、対象事業を拡大。独立行政法人などの業務も対象とし、2009年現在約80事業で市場化テストの導入・実施が決まっている。たとえば、国民年金保険料の徴収業務では、民間委託でコストを従来の4割まで抑制できた。内閣府によると、すでに官民競争入札を実施した44事業をみると、1年当り約100億円の経費削減効果があったという。ただ霞が関の中央官庁は市場化テストの導入拡大には慎重で、自治大学校や消防大学校の管理・運営業務の入札がいったん閣議決定されながら、総務省の反対で見送られる例も出ている。

[編集部]

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知恵蔵 「市場化テスト」の解説

市場化テスト

中立・公正な競争により、公共サービスの質の維持向上と経費削減を目指すとして、公共サービス改革法(競争の導入による公共サービスの改革に関する法律)が2006年7月に施行された。市場化テストとは英国で一般化された用語で、国の行政機関等または地方自治体が自ら実施する公共サービスの提供について、官と民が対等な立場で競争入札に参加し、価格・質の両面で最も優れたものが、そのサービスの提供を担う仕組み。PFIや指定管理者制度が公の施設の管理運営などを対象とするのに対して、市場化テストでは行政事業全般を対象とする。現在、地方自治体が実施する業務では、窓口業務が市場化テストの対象と想定されている。戸籍謄本等、外国人登録原票の写し等、納税証明書、戸籍の附票の写し、住民票の写し等、印鑑登録証明書の交付請求の受付及びその引き渡し等、公務員が行うのが当然とされていた領域でも民間の創意工夫を活用することで、「簡素で効率的な」政府を実現することが目的だが、自治体や外郭団体の職員の雇用がどうなるのか、実施によって知り得た情報が漏洩しないかという課題も生じる。自治体には、官民競争入札等の公正な実施の監理等を行う審議会その他の合議制の機関が置かれる。

(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)

市場化テスト

小泉政権の下で「民間にできることは民間で」なる市場経済重視の動きが一段と強まった。政府は英・サッチャー政権時代の強制競争入札制度に似た「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」を2006年5月に制定した。これは公共機関が担ってきたサービスの実施を官民の競争入札にかけ、コストの削減を図ろうとするものである。07年度に対象分野とされたのは、ハローワーク関連事業、国民年金保険料徴収業務、統計調査業務などであったが、08年度には国立病院の未収金や公営住宅の滞納家賃の徴収、上下水道の管理など22業務が段階的に加えられ、49業務となる予定。これらの中には、自治体が実施している業務も多いが、政府は自治体に市場化テストの導入を促すとしている。政府はこれによって公的支出を削減できるばかりか、新たな市場を開拓できるとしている。だが、先行した英国などでは、民間落札業者によるサービスの低下や従業員の労働条件の悪化などが問題視された。業務分野の選定や入札仕様書の作成などに多くの課題を残しているのも事実である。

(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2008年)

市場化テスト

「官」が独占してきた公共サービスを「官」と「民」が対等な立場で競争入札し、価格・質の両面で最も優れた者が、そのサービスの提供を担っていく官民競争入札制度。(1)公共サービスの向上、(2)公共サービスの効率化・コスト削減、(3)民間ビジネス機会の拡大、が目的で、究極の行財政改革・規制緩和との評もある。2005年3月に閣議決定した「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」に盛り込まれた。試行導入されるモデル事業には、(1)公共職業安定所関連(キャリア交流プラザ事業、若年者版キャリア交流プラザ事業など)、(2)社会保険庁関連(年金電話相談センター事業、国民年金保険料の収納事業など)、(3)行刑施設関連事業(刑務所の施設警備など)の3分野8事業が選定された。こうした試行的導入期間を経て、06年5月には公共サービス改革法が成立(同年7月施行)し、本格的な競争入札が始まった。

(本庄真 大和総研監査役 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

人事労務用語辞典 「市場化テスト」の解説

市場化テスト

行政機関が行っている公共サービスを民間にも開放し、競争原理を導入することで、官民どちらが価格と質の面で担い手にふさわしいかを決める制度です。官民競争入札制度とも言います。
(2005/10/31掲載)

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