幕内(読み)マクウチ

デジタル大辞泉 「幕内」の意味・読み・例文・類語

まく‐うち【幕内】

江戸時代将軍相撲上覧のときに上級力士幔幕まんまくの中に座を与えられたところから》相撲で、番付の第一段に名が記される前頭以上の力士。幕の内
劇場で、舞台の幕より内側。劇場の表側に対する楽屋。また、楽屋に働く頭取俳優大道具小道具衣装床山など。

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精選版 日本国語大辞典 「幕内」の意味・読み・例文・類語

まく‐の‐うち【幕内】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 遊山行楽などの際に張りめぐらした幕の内側。
    1. [初出の実例]「御供をしてぎおんへまいったれは、まくの内へよび入て、一の上座におかれてござる」(出典:虎明本狂言・茫々頭(室町末‐近世初))
  3. 芝居で、幕の内側。舞台。また、その舞台に立つ人。役者まくうち。
    1. [初出の実例]「幕の内にて、『こんど長崎寄合町』の哥に成り」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)一)
  4. 芝居で、幕のしまっている間。幕間(まくあい)
    1. [初出の実例]「幕の内より、おやな・おかや膳立をして居る。幕開く」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)二)
  5. 芝居の幕間に食べる弁当。俵形のにぎり飯とおかずを詰め合わせたもの。また一般に、同種の弁当。幕の内弁当
    1. [初出の実例]「幕の内でも取りにつかはしませうか」(出典:黄表紙・怪談筆始(1796))
  6. 江戸時代、将軍の相撲上覧の際に、幕の内部に伺候し、円座御免の待遇を受けた、最もすぐれた数人の力士。まくうち。
  7. まくうちりきし(幕内力士)
    1. [初出の実例]「おいらもちっともむと、ずいぶんまくの内ぐらいにはなられると」(出典:洒落本・太平楽記文(1784))
  8. ( 能舞台で橋掛りと鏡の間との境に下げてある揚幕の内の意から ) 舞台に対して、楽屋。
    1. [初出の実例]「はしがかりのまくは〈略〉、近年は、どんす、きんらん、色々けっこうなるまくにて、まくの内の習も、ならぬ事あり」(出典:わらんべ草(1660)一)
  9. 役者と情交関係を結んでいる芸娼妓
    1. [初出の実例]「幕内(マクノウチ) やくしゃとなじむ子をいふ」(出典洒落本・箱まくら(1822)上)
  10. 自分の領域。また、自分たちの仲間。
    1. [初出の実例]「まくのうち大じにちょちょらを用てよし」(出典:洒落本・金枕遊女相談(1772‐81頃))
  11. 物事の裏側。外からはわからない内部の事情。内幕
    1. [初出の実例]「こっちの幕(マク)の内を見られねへやうになさりまし」(出典:洒落本・廓節要(1799))

まく‐うち【幕内】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 芝居で、舞台の幕より内側。転じて、役者。俳優。幕の内。
    1. [初出の実例]「こちの店の子がまくうちとわけがあって」(出典:洒落本・箱まくら(1822)上)
  3. 芝居関係者の間で、楽屋。また、楽屋に働く人。特に俳優を除外して、奥役・作者・囃子(はやし)方・衣裳方・床山・大小道具方などをさす。裏方
    1. [初出の実例]「旦那様に幕内の事しられては、しゅっときえぎえ」(出典:浮世草子・当世芝居気質(1777)二)
  4. ( 楽屋は観客席からは見えない所の意から ) 内証。うちわ。ないない。秘密。
    1. [初出の実例]「段々増に油引多葉粉のんで、まく中(ウチ)の相談、文句のしぐみ」(出典:洒落本・戯言浮世瓢箪(1797)四)
  5. まくのうち(幕内)〔相撲講話(1919)〕
  6. 幕内力士。また、その地位。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「幕内」の意味・わかりやすい解説

幕内
まくうち

力士の階級の一つ。前頭 (まえがしら) から上位の力士の総称で,番付の最上段に名を連ねる。かつて将軍上覧相撲において上位力士が張幕の内にいたところから,この名称が生まれた。幕内力士になることを入幕という。

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