長崎県北部の陶磁器窯で、三川内(みかわち)焼ともいう。広義には江戸初期から松浦(まつら)氏の御用窯として活躍した、平戸藩内の陶磁器窯全体をさす。領内には松浦鎮信(しげのぶ)が1598年(慶長3)朝鮮半島の陶工巨関(きょかん)らに開窯させたという平戸の中野窯(現平戸市紙漉(かみすき))があり、柳の元(もと)窯、葭(よし)の元窯、牛石窯、畑ノ原窯、古皿屋窯などとともに唐津(からつ)焼系の陶器を焼成した。この中野窯の陶工が1650年(慶安3)に佐世保(させぼ)の三川内に移って作陶を始めており、創始の時期は判然としないが、江戸前期には白磁染付がある。これは天草(あまくさ)の磁石を原料としていることから乳白色の素地(きじ)に特色があり、澄みきった淡い風合いで高雅な趣(おもむき)に満ちている。江戸末期には入念な細工で独特の作風をつくりあげ、1871年(明治4)に民営に移ってからは欧米へも大いに輸出された。
[矢部良明]
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