広目天(読み)こうもくてん

精選版 日本国語大辞典 「広目天」の意味・読み・例文・類語

こうもく‐てん クヮウモク‥【広目天】

(Virūpakṣa 「毘留博叉」の訳語) 仏語。四天王の一つ。また、十二天、十六善神の一つ。須彌山(しゅみせん)の西中腹に居て、閻浮提(えんぶだい)衆生を観察し、西方を守護する護法神。形像は四天王の一つとして本尊西北安置甲冑(かっちゅう)を着けた忿怒形に表わされ、持ち物は矛(ほこ)や索(さく)巻物と筆などで一定しない。西方天。広目天王。広目。

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デジタル大辞泉 「広目天」の意味・読み・例文・類語

こうもく‐てん〔クワウモク‐〕【広目天】

《〈梵〉Virūpākṣaの訳。音写は毘留羅叉・毘婁博叉》四天王の一。十六善神の一。西方にあって仏法を守護する。悪人を罰して仏心を起こさせることをつかさどる。像はふつう、甲冑かっちゅうをつけ、筆と巻物を持つ姿に表される。西方天。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「広目天」の意味・わかりやすい解説

広目天
こうもくてん

仏教の守護神。サンスクリット語ビルーパークシャ・デーバVirūpāka-deva(「醜い目をもてるもの」の意)の訳で、醜目(しゅうもく)天、西方(さいほう)天、広目天王とも称する。須弥山(しゅみせん)の西中腹に住し、浄天眼(じょうてんげん)で衆生(しゅじょう)を観察し、西方にあって仏法を守護する善神。その形像に関しては一定しないが、普通、武将形で、赤色または黄色の身に甲冑(かっちゅう)を着け、手には三叉戟(さんさげき)、筆、索(さく)、剣、鉾(ほこ)などを持つ。持国(じこく)天、増長(ぞうちょう)天、多聞(たもん)天とともに四天王の一つに数えられる。

[江口正尊]

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百科事典マイペディア 「広目天」の意味・わかりやすい解説

広目天【こうもくてん】

仏教守護の天部の神。四天王一人で,須弥山(しゅみせん)中腹の西部に住み,西方の世界を守護する。竜を従え悪人を罰して善に帰らせるという。
→関連項目山口大口費

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「広目天」の意味・わかりやすい解説

広目天
こうもくてん
Virū-pāksa

四天王の一つ。毘留博叉,毘流波叉と音写され,雑語,醜眼,悪眼とも訳される。須弥山中腹の西方,周羅城に住し,西大洲を守護するところから西方天とも呼ばれる。悪人を罰し,仏心を起させる。像容は,冑を着け,左手に絵巻,右手に筆を持ち,足下に邪鬼を踏みつけている姿に表わされることが多い。代表的な広目天像は法隆寺,当麻寺,東大寺,興福寺などにみることができる。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「広目天」の解説

広目天 こうもくてん

仏教の守護神。
帝釈天(たいしゃくてん)につかえる四天王の一神。須弥山(しゅみせん)の西中腹にすみ,西方の世界を守護する。形像は甲冑(かっちゅう)をつけた憤怒形(ふんぬぎょう)で,左手に巻物,右手に筆をもつのが普通。ヒンズー教のシバ神の化身。奈良東大寺の像が有名。別名に毘楼博叉(ひるばくしゃ)。

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世界大百科事典(旧版)内の広目天の言及

【四天王】より

…四大天王,四王,護世四王ともいう。東方に持国天(提頭頼吒(だいずらた)の訳),南方に増長天(毘楼勒叉(びるろくしや)),西方に広目天(毘楼博叉(びるばくしや)),北方に多聞天(毘沙門)が位置する。《増一阿含経(ぞういちあごんきよう)》や《阿育王経(あいくおうきよう)》には,四天王が釈尊のもとに現れて帰依したことや,釈尊の涅槃(ねはん)の後に仏法を守護することを釈尊から託されたことを記し,《金光明最勝王経》には,四天王が釈尊に対し本経を信奉する人々とその国家を守護することを誓ったことが説かれている。…

※「広目天」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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