庵室(読み)あんしつ

精選版 日本国語大辞典 「庵室」の意味・読み・例文・類語

あん‐しつ【庵室】

〘名〙 (「あんじつ」とも) 木で造り屋根を草で葺(ふ)いた、小さな仮の家。僧侶世捨て人住居。転じて、主に尼僧の住まい。庵。いおり。あんじち。あんや。
今昔(1120頃か)一二「書写の山に移りて三間の奄室を造て住す。日夜に法花経を読誦(どくじゅ)するに」
浄瑠璃・当麻中将姫(1714頃)三「薄雲は只ひとり、あんじつにかけ入て」
[語誌]→「あんじち(庵室)」の語誌

あん‐じち【庵室】

〘名〙 (「しち」は「室」の呉音) =あんしつ(庵室)
※十巻本和名抄(934頃)三「庵室 唐韻云庵〈烏含反 俗云阿无之知〉小草舎也」
[語誌](1)和語の「いおり(庵)」に対応する漢語で、ともに僧尼の住む仮屋をいうが、「いおり」は一般の仮屋の意味にも用いる。
(2)「文明本節用集」までは「アンシチ」と示されるが、室町末期に至ると諸節用集に多く「アンジツ」と示され、近世も同様である。
(3)「シ」の仮名は近世まで濁音であったが、明治以降はアンジツ、アンシツが併用される。

あ‐ぜち【庵室】

〘名〙 (「あんじち(庵室)」の変化した語)
② 近世、奈良の一般寺院に対する呼称。ただし、興福寺は寺(てら)と称した。転じて、寺子屋

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デジタル大辞泉 「庵室」の意味・読み・例文・類語

あん‐しつ【×庵室】

《古くは「あんじつ」とも》僧尼や世捨て人の住む粗末な家。いおり。
嵯峨の奥にありと聞く、滝口が―に訪れて」〈樗牛滝口入道
[類語]あんいおり草庵草堂東屋

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世界大百科事典(旧版)内の庵室の言及

【庵】より

…出家した僧尼や世俗をさけた隠遁者が住む小住居。草庵,庵室,退居庵ともいう。ここに住む庵主は第一線を退いた老尼僧や地方土豪の半聖半俗の翁媼が多く,閑居の宗教生活を送った。…

※「庵室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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