デジタル大辞泉 「庵」の意味・読み・例文・類語
あん【×庵/×菴】
1 世捨て人や僧侶などの閑居する小さな
2 大きな禅寺に付属している小さな僧房。
[接尾]文人・茶人やそれらの人の住居、また料亭などの名に添えて、雅号・屋号として用いる。「芭蕉―」「好日―」
[類語]
→「いお(庵)」の語誌。
「ロドリゲス日本大文典」には「『寺』(Teras)の種類には、Ii(寺)という主要で正式なものと Yn(院)と An(菴)との三つがあるので」「『院』(In)と『菴』(An)とは大寺に附属した小寺のようなものであって、そこに或『坊主』(Bonzo)が隠遁したり住居したりして居る云々」のような叙述が見られる。
( 1 )意味的にも音韻的にも関連の強い「いへ」と同源と見られる。「いへ」から「いほ」が派生したとの見方もあるが、「いほ」は、家屋形態に主眼があり、それもより原始的なものと思われる。
( 2 )「いほり」は、もと「いほを作る」という意が含まれていたと思われるが、平安時代以降は「いほ」と同意になり、散文では「いほり」が次第に優勢となった。
( 3 )「いほ」「いほり」は「庵」「廬」の訓に当てられ、漢文学でのこれらの字の用法に添って、隠遁者の住居も意味するようになった。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出家した僧尼や世俗をさけた隠遁者が住む小住居。草庵,庵室,退居庵ともいう。ここに住む庵主は第一線を退いた老尼僧や地方土豪の半聖半俗の翁媼が多く,閑居の宗教生活を送った。寺院が寺産,寺名,寺格,祭祀具,住持という条件がそろうと成立し,檀信徒や住持の相続がなされて発展するのに対して,庵はこれらの条件が不安定かつ小規模である。大寺院境内の塔頭(たつちゆう)や地方土豪の持庵も庵の一種。文人,茶人の庵号仮居もある。
執筆者:赤田 光男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…院は周囲に垣をめぐらした建物をいい,官舎の名にも用いられたが,仏寺の名に院号をつけることがさかんになったのは唐末からである。寺,院より規模の小さなものは,庵,堂などと名づけた。中国で最初の寺院は,後漢明帝のとき洛陽に建てられた白馬寺と伝える。…
…禅宗寺院の子院で塔中とも書く。高僧の住房や庵居から発展し,その墓(塔)を守って弟子が相伝した。塔の中で首座にあるところから塔頭と呼んだとも,また塔の頭(ほとり)でこれを守ったことから塔頭と呼んだともいう。…
※「庵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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