異体字の一種。正字(正式の字体)に対し、正式ではないが世間一般で広く行われている字体をいう。略字とも重なる部分があり、また極端な場合には誤字(譌字(かじ))ともなって、その正確な規定はかならずしも容易でない。俗字の例をあげれば、耻(恥)、(丈)、伜(倅)、耒(来)、裡(裏)などが( )内の文字の俗字とされる。俗字の指摘は中国ではすでに唐の顔元孫の『干禄字書(かんろくじしょ)』(774=大暦9)にみられ、漢字の字体を正・俗・通の三つに分類している。日本では『干禄字書』など中国の字書の影響を受けて『類聚(るいじゅ)名義抄(みょうぎしょう)』(編者未詳、1100ころ成立)が「俗」などと注記しているのが古い。俗字は学校教育などにおいては正字と対置され、比較的低い価値しか与えられていないようにみえるが、広く日常生活に根を下ろして幅広く用いられている。また一方では新たな俗字もつくられつつあり、その点では生きた文字として正字とともに重視すべきだとの立場もある。
[月本雅幸]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…ただし文字もまた一つの規範であり,〈略字〉という表現そのものの中に,規範に反するものとする若干の非難の気持ちのこめられることは,また十分にありうることであろう。かつての中国で略字が〈省文〉〈省字〉などと呼ばれ,〈俗字〉〈俗体〉と考えられたとき,そこにはそうした意識もありえたと思われる。黙認されてはいても,いまの〈簡体字〉ほど自分の存在を主張できるほどのものではなかったであろう。…
※「俗字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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