建部大社(読み)タケベタイシャ

デジタル大辞泉 「建部大社」の意味・読み・例文・類語

たけべ‐たいしゃ【建部大社】

滋賀県大津市にある神社。旧官幣大社祭神日本武尊やまとたけるのみこと。武の神として信仰される。近江おうみ一の宮

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日本歴史地名大系 「建部大社」の解説

建部大社
たけべたいしや

[現在地名]大津市神領一丁目

瀬田せた川東岸、旧栗太くりた郡に鎮座近江一宮で、旧官幣大社。鎮座の地は対岸の滋賀郡を瀬田唐せたのから橋で結ぶ交通の要所で、推定国府域のほぼ南西隅を占め、一帯は少なくとも古代近江の政治的中心であった。

〈近江・若狭・越前寺院神社大事典〉

〔古代〕

延喜式」神名帳に栗太郡内として「建部タケヘノ神社」とみえ、名神大社に列する。主祭神は日本武やまとたける尊、相殿に天明玉あまのあかるたま命、権殿に大己貴おおなむち命を祀る。「三代実録」によれば、貞観二年(八六〇)三月一日「建部神」が官社に列し、同五年六月八日従五位下の神位が与えられ、同一〇年七月一一日従四位上に昇位している。応和二年(九六二)六月九日には正三位に昇る(日本紀略)。なお正一位になったとするが(「建部大明神神縁年録写」社蔵)、明らかではない。「拾芥抄」諸社部に三十神名としてみえる「廿六日建部たけべ」は当社であろう。

創建年代は未詳だが、永正七年(一五一〇)成立という神縁年録写によれば、この神は神崎かんざき千草ちぐさ岳に降臨景行天皇四六年に同郡建部郷宮殿を創建した。天武天皇四年(六七五)建部連安麻呂らとともに湖を下り栗太郡勢多せた郷に到着、大野おおの山に遷座、さらに天平勝宝七年(七五五)三月同山麓の現在地に移建したという。この移建を進めた建部公伊賀麻呂は、「続日本紀」天平神護二年(七六六)七月二六日条に近江国志賀団の大毅とみえる人物だが、日本武尊を祭神とすること、創建の地を建部郷とすることなどと併せ、大和政権が設定した軍事集団建部の居住地にその氏神のような存在として創建されたと思われる。

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改訂新版 世界大百科事典 「建部大社」の意味・わかりやすい解説

建部大社 (たけべたいしゃ)

滋賀県大津市神領に鎮座。日本武(やまとたける)尊をまつる。創建年代不詳。社伝によれば,景行天皇46年日本武尊の子建部稲依別王(たけべいなよりわけのみこ)の創祀という。860年(貞観2)官社に列せられ,863年従五位下,868年従四位上に叙され,延喜の制で名神大社,のち近江国一宮とされる。《平治物語》の〈頼朝遠流の事〉の条に,当社を八幡神をまつる社と記しているが,当時そのようにも信仰されたのであろう。京都への交通上の要地にあるため,兵火にあうことが多く疲弊したが,近世には膳所(ぜぜ)藩がよく保護した。旧官幣大社。例祭4月15日,ほかに特殊神事が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「建部大社」の意味・わかりやすい解説

建部大社
たけべたいしゃ

滋賀県大津市神領(しんりょう)に鎮座。日本武尊(やまとたけるのみこと)を祀(まつ)る。景行(けいこう)天皇46年に、日本武尊の御子の建部稲依別王命(たけべいなよりわけおうのみこと)が淡海(おうみ)国(近江、滋賀県)神崎(かんざき)郡建部(たけべ)郷千草嶽(ちくさだけ)に日本武尊を奉斎、その後675年(天武天皇4)建部公安麿(たけべのきみやすまろ)は勅命により栗太(くりた)郡勢多(せた)郷大野山(おおのやま)に遷座し、さらに755年(天平勝宝7)建部公伊賀麿(いがまろ)により山麓(さんろく)の現社地に遷宮した。近江国栗太郡の延喜(えんぎ)式内社であり、往時は近江国の一宮(いちのみや)を称した。旧官幣大社。例祭日は4月15日。8月17日の納涼船幸祭には、篝火(かがりび)をつけた御座船(ござふね)が瀬田川を往来する。社蔵の女神坐像一躯(ざぞういっく)、文永(ぶんえい)7年(1270)刻銘の石灯籠(いしどうろう)一基は、ともに国の重要文化財

[二宮正彦]


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デジタル大辞泉プラス 「建部大社」の解説

建部大社

滋賀県大津市にある神社。延喜式内社。祭神は日本武尊(やまとたけるのみこと)。近江国一之宮。平安時代の女神坐像は国の重要文化財。

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